ペースメーカー留置率が低いTAVI用人工弁

Real-world experience using the ACURATE neo prosthesis: 30-day outcomes of 1,000 patients enrolled in the SAVI TF Registry
EuroIntervention 2018;13:e1764-e1770
 
”ペースメーカー留置率が低いTAVI用人工弁”
現在治験を除けば日本で使用されているTAVI用のself expandable valveはCore valve Evolute Rだと思います(2018年3月現在)。当院ではこれ以外にACURATE neo TFも使用しています。最近登場した弁ではありませんが、近頃ドイツを始めとしてシェアが伸びているようです。その30日成績が最近発表されたのでご紹介したいと思います。
対象:75歳以上の重症ASでheart teamによりTAVIが適当と考えられた患者1000名
方法:ドイツを中心としたヨーロッパの多施設(25施設)前向きレジストリー
結果:
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1/3の患者に偏在性や重度の石灰化がCTにより確認された。
63%の症例が全身麻酔で施行された。
88%の症例で18Fr.シース(COOK)が用いられた。
前拡張が96%で施行され、後拡張も45%で施行された。
手技成功はSmall 98.9% (n=258), Medium 98.4% (n=424), Large 99.0% (n=305) で得られた。
留置後の圧較差は8.4 mmHgであった。
Grade 2以上のPVLはSmall 4.4% (n=10), Medium 3.3% (n=12), Large 5.1% (n=13)で認められた。
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30日後の死亡率は1.4%,脳卒中は1.9%,新規ペースメーカーの留置は8.3%であった。
考察:
今回のレジストリーの結果では30日死亡率、後遺症の残る脳卒中の発生率は以前のAcurate neo TFの報告よりも少なく、永久ペースメーカーの留置率も同様に低かった。Evolute R (3.2%)、Direct flow (2.0%)、Lotus (2.6%)、Portico (2.9%)などの成績と比較しても30日死亡率は低かった。 さらに18Fr.シースが必要であるにもかかわらず、Major vascular complicationは3.2%にとどまった。さらに永久ペースメーカーの留置率に関しては、8.3%という低い値で、他の弁;Evolut R (22.1%), Direct Flow (12%), Lotus (30%), Portico (9.8-13.5%) と比べると少ない。今回のレジストリーでは前拡張用のバルーンは周囲経より得られた弁輪径よりも1-3 mm小さいものを使い、後拡張でも1-2 mm小さいものを用いることで弁輪への損傷を最小化するように図られた。
また、”supra-annular” デザインであることより有効弁口面積が大きく取れ、術後の平均圧較差が小さくなっている。術後のARに関しても中等度以上は4.1%と、他の弁;Evolut R (8.5%), Direct Flow (3%), SAPIEN 3 (3.1%), Portico (3.8%-5.7%)とほぼ同様である。
Sapien3では後拡張を行うと脳卒中の発生が増える報告があるが、今回のレジストリーでは後拡張が多いものの、特にそのようなことは無かった。以上の結果を受けて、ペースメーカー留置を避けたい患者には特に価値がある弁であろう。
私見:
Acurate Neoの留置方法には特徴があります。Evolut Rの場合心室側から弁が展開しますが、Acurate neo TFの場合、大動脈側から展開します。実際の操作にも特徴があり、展開は二段階式になっています。一段階目は大動脈側が展開し、丁寧にゆっくりと行いますが、二段階目の弁を展開する時は素早く展開する必要があります。
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Acurate neo
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大動脈側から展開
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弁を展開したところ (自験例)
Self expandableですが、Evolut Rのようにsheathlessでは挿入できず、18Fr.シースが必要です。アクセスルートが欧州の患者さんより小さい日本人では問題かもしれません。今後改良版が出る予定らしいですが18Fr.のままだそうです。
シェアが伸びている一番の理由はペースメーカー留置率の低さだそうです。TAVI後にPMIを追加すれば医療費がさらにかかることが一部で問題視されています。
もちろん、日本の術者のきめ細やかな留置方法をすればPMI率をさげることは可能だと思います。某プロクターの施設ではEvolut Rでもペースメーカー留置率は5%程度だと伺いました。Sapien 3もEvolut Rもそれぞれにメリット・デメリットがあり、患者さんに応じて使い分けることが多いと思います。今後はこのように特色のある弁が色々と出て、患者さんに応じた弁の使い分けが、TAVI治療全体のより良い結果につながっていくのではないかと思っています。