築いてきた出会い、新たな出会い

1. なぜ留学しようと思ったのか
はじめまして。2016年度のSUNRISEレポーターの伊地知 健(イヂチ タケシ)です。留学に興味のある方に少しでも参考となるレポートができれば幸いです。
私が海外留学を考え始めたのは研修医の頃からでした。循環器内科に入局する以前からその思いがあったわけですが、今思い返すとかなり漠然とした“海外留学”のイメージでした。そんな曖昧な動機であった為、循環器内科を専攻し、臨床助手として多忙な業務をこなす日々の中では留学のことはほとんど考えることはありませんでした。
そんな中、自分の人生の転機の一つになったのは2009年のことでした。このSUNRISE Lab.代表の一人である“Dr. G”の東海大学赴任です。海外留学から戻ってきたDr. Gの体験談を聞くにつれ、再び自分の留学スイッチが入ったことは言うまでもありまません。
もう一つの転機となったのは海外学会への参加です。ESC、TCTといった海外学会に参加し世界の広さを体感しました。またその学会中、まさに現在進行形で留学されていた日本人フェロー達の話を聞くことで留学への思いがさらに強まったことは今でも覚えています。
 
やはり、留学したい (漠然)
 
2. なぜ現在の留学先を選んだのか
とはいえ、日々の臨床業務や学会活動は多忙であり、また充実したものでありました。そんな日々を送って気が付けば医師9年目となっておりました。そんな2013年の冬、Dr. Gより今後の留学先についてどうしたいかのという質問がありました。それまでの仕事の経緯から冠動脈病理は身近なものであった為、Dr. Gがかつて留学されていた施設への留学であればすぐに紹介してもらえる非常においしい立場であったと思います。
しかし、私はかねてより重症心不全の治療に興味があり、またそんな患者さんが目の前で亡くなっていく状況をなんとかしたいという思いは常々ありました。心臓移植や心臓同期療法は適応の症例には非常に効果的ですが、すべての患者さんが受けられる治療ではないのが現状です。何か他にいい方法はないものかと悶々としていた時に何気なく目に留まったのがTCTMDから定期的に届くメール(TCTに参加したことがある方に届く)でした。そのメールにはPowerPointが添付されており、CADUCEUS trialやDYNAMIC trial等の心筋再生療法に関する取り組みについて説明しているものでした。それを読んだ時に心筋再生療法が新たな治療法になるかもしれない、心臓移植ができない患者さんにも低侵襲で心機能の改善を図ることができるかもしれない、そんな可能性を感じました。その研究を行っていた施設がCedars-Sinai Medical Centerであり、Eduardo Marban先生のLabだったのです。
 
ここに、留学したい (確信)
 
3. 留学するにあたって困難であった点、どのように解決したか
今でこそCedars-Sinai Medical Centerについてどんな場所なのかを知ることができましたが、留学先と決めた当時はお恥ずかしい話ですが全く知識がありませんでした。しかも全く伝手がない状況で途方に暮れておりました。メールで直談判という手段ももちろんあったと思いますが、そうは言ってもどんな場所なのかぐらいは知りたい。そんな、悶々とした状況を打開するきっかけとなったのが、2014年度のSUNRISEレポーターであるイタリア留学中のDr. Oからのメールでした。それは若手スタッフ宛にもし希望者がいれば今いる施設を紹介してくれるという非常にありがたいメールでした。全く話が違うのですがこれはチャンスと思い、その当時の思いをメールにぶつけてみました。すると、
「いじっちゃん、久しぶり!
メールありがとう!
いじっちゃんが自分のやりたいことを見つけつつ前進していることがわかって嬉しかったよ!
実はいじっちゃんに詳しくは話していなかったかもしれないけど、慶應にいたときは何と再生医療の基礎研究をやっていたんだよね!(笑)
それで、まさにCedars-Sinaiのそのラボに留学に行っていた慶應の先生とも親しいので、見学に行ってみたいとか本気で留学を考えたい、ということであれば紹介できるから言ってね!
いじっちゃんはPCRは来れるの??」
(原文ほぼそのまま)
…という予想以上の内容の返信が。このメールをきっかけにコネクションを作ることができ、2014年秋にLos AngelesでDr. Marbanとの面接のアポイントメントに成功しました。
2014年の面接で受け入れの条件の一つとなったが、Japanese resourceの獲得でした。要は奨学金などの自分の貯金以外の滞在費用を工面せよとのことですが、実はここに大きな問題が潜んでいました。
企業や財団法人の奨学金の一般公募はいくつもあるのですが、その多くが留学先からの受け入れ承諾書を必要とします。受け入れてもらう為に奨学金を探しているのに、受け入れ承諾書がないと応募すらできないというこの矛盾。この事情を説明し、受け入れ承諾書をいただくまでにはかなりの時間を要しました。根気強くメールを送り続けることが大切です。この奨学金獲得に関する解決策として受け入れ承諾書がなくてもapplyできる貴重なチャンスがあります。
 
そう、それがSUNRISE YIAです。

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伊地知 健(Los Angeles, USA)