文化は言語の条件であり、その産物である  ジョン・デューイ

みなさん、こんにちは。
“もう”半年か、”まだ”半年かわかりませんが、留学を開始して半年が経過しました。ちょっと焦りも生まれてきたことを考えると、”もう”半年の感が強いのでしょうか。
今回のお題は、”異文化のハードル”です。
留学(前?)の三大ハードルは、①留学先を見つけること、②お金、③家族の理解、と某先輩が言っていましたが、私も賛成です。留学前には上記3つのハードルがありました。そう考えると、いつの間にかそれらをクリアしているので、”異文化のハードル”について思いを巡らせることは、留学”中”に初めて検討できる贅沢なお題だと感じます。これもSUNRISE lab.の支えあってのことと感じずにはいられません。
*給料、お金
給料に関しては、留学をお願いしたとき、「給料は出ないが、それでもいいか?」とボスに念押しのごとく聞かれたので、給料は出ないものと認識しており、交渉の余地もないと思っています。グラントと貯金で生活しているのが現状です。
フランスでは休日はお店がほとんど開いておらず、コンビニや自販機もありません。そのような環境で生活すると、自然と出費(特に食費)が減ることに正直驚いています。我が家の生活費、特にエンゲル係数は、日本にいた時に比べて、とても低下しています。質素倹約を心掛けずとも自然と質素な生活になっています。
*ボスはフェローのどこを評価するか
以前ボスが「日本人にがっかりしたことはない」と言っていました。これは日本人というよりは、歴代の先輩の功績に対する評価だと思います。私にとっては、かなりのプレッシャーなのですが。普段の仕事では、日本人は仕事姿勢が真面目で、礼儀正しいとの、誉め言葉を現地ドクターからいただきました。しかし、これらは日本人に対する”印象”であって、”評価”ではないと思います。”評価”と”印象”は似て非なるものだと思います。長時間病院にいることが、日本のように、イコールhard workと印象を持たれることはあるかもしれませんが、評価されているとは思えません。評価となるとやはり、論文ではないかと思います。「(先輩留学生)は、論文を〇本書いた」とボスが褒めるように言っていました。これが評価だと思います。「論文は書かなかったが、よくやっていた」という評価になることは、ちょっと考えられません(焦)。
*異文化=言語??
SUNRISE labの先輩方も”異文化のハードル”として、言語、すなわち英語のハードルを挙げていますが、賛成です。しかしながら、私(フランス)の場合は、ちょっと違います。日本人の私と、フランス人はともにNon-native English speakerなので、それぞれが、French-English、Japanese-Englishとなります。ですので、私の言語のハードルは、Englishではなく、French- Englishです。たとえば、Native speakerであれば、私の稚拙な英語であっても、忖度してくれて、通じそうです。ところが、(少なくとも)職場のドクターには通じないこともあります。例をあげると、「Would you + 動詞?」、「Could you + 動詞?」構文は、「~してくれませんか?」とお願いする時に使用します(私はそう学びました)。ところが、「Can you + 動詞?」構文で言わないと通じないこともあります。日本人の例にもれず、私も頭の中で正しい文法を構築して、”正しい英語”で話そうとしています。ですが、倒置疑問文が長い場合や、関係代名詞を使用すると通じないこともありますので、なるべく使用せずに、短文でつなぐようにしています。「Did you see my email?」(倒置疑問文)と言う代わりに、「You see my email (↗) ?」と言った方が通じる気がします。もちろん私の発音等の問題もあるのですが、職場のFrench-Englishにアレンジし直すことが、私にとっては、異文化の、英語のハードルでしょうか? 英語の勉強の努力を別の方向に向ける必要性がある気がして、葛藤が生まれます。決して、French-Englishを非難しているわけでも、自分が正しいと主張しているわけでもありません。”異文化のハードル”のたとえ話です(笑)。
*ボスに言われたひどい一言
必死でフランス語勉強したのに、出勤初日に会って、片言のフランス語でなんとか話そうとしたのに、「英語で話せ」と言われたことでしょうか。そしてつい先日も、下記のメールを受け取りました。片言のフランス語で話すと、とても喜んでくれる職場の人の方が多いのに、ボスはそうではないようです。
Figure
ボスから最近受け取ったメールです。症例のスライド作成を依頼されて、それを提出した際のものです。
1行目は、高評価をいただいたということでしょうか。
2行目は、私の英語とフランス語の双方を、同時に否定しているようです(悲)。
 
他にも、
・切れないサランラップ・・・本当に切れません。このような些細な事に腹が立ってしまいます。
・日照時間の短さ・・・11月末現在、日の出が8:30頃(出勤後)で、日の入りが18時頃(帰宅前)なので、ここ1カ月太陽を見ていません。
・無駄に多い必要書類・・・妻の妹の生年月日の記載を求められました。
などの異文化のハードルが沢山ありましたし、これからもっと出てくるものと覚悟しています。
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渡仏半年にして、ようやく先日滞在許可証を取得しました。たかが滞在許可証、されど滞在許可証です。感慨深いです。このために半年間(渡仏前を含めると約1年半)、フランス社会と、そして異文化のハードルと格闘してきたのですから(涙)。
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先日、世界遺産の城壁都市カルカッソンヌに行ってきました。某マンガの”壁”のモデルにもなったとか、ならなかったとか。日本からはアクセスが悪く、ツアーに含まれていることも稀です。しかしながら、フランスではモン・サン・ミッシェルに次ぐ年間観光客数を誇る人気観光地です。
高い城壁が、異文化のハードルを彷彿とさせます(笑)。越えてみせます!!
留学”後”は、異文化のハードルが何たるか別の答えになっているかもしれません。
言語は問題ではない、という結論を下す自分がいるかもしれませんね。

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中島 孝(Bordaeux, France)