イタリアの正式名称は,イタリア共和国である.イタリア語では Repubblica Italiana,英語では Republic of Italy となる.地中海に位置し,長靴型の特徴的な形をしている.国土面積は約30万平方キロメートルで総人口は約6000万人である.面積は日本の約80%,人口は日本の約半分と考えると,覚えやすい.ちなみに,100万人前後の都市は,ロー マ・ミラノ・ナポリ・トリノと4つある.サッカーや自転車レースなどのスポーツや,パスタやビザなどのイタリア料理といった食文化の印象が強い国である一方で,個人的には,政治的・経済的に関して,あまりパッとしない印象を持っていた.これは,一般にイメージするイタリア人像や,前首相であるベルルスコーニさんの影響が大きかったのかもしれないが,人口はEU(欧州連合)の中で,ドイツ・フランス・イギリスに次ぐ第4位であり,ヨーロッパ内の大国の一つと言える.さらに,GDP(国内総生産)も世界ランクで第8位(EU内では4位)であり,主要国首脳会議(G7,いわゆるサミット)にも参加している.私の所属する病院は,以前にもお話したようにヴェネト(Veneto)州ヴェネツィア(Venezia)県に所属するミラーノ(Mirano)市にあるが,人口は約3万人と小さな市である.取り立てて有名なものはなく,北イタリア地方の一都市であり,私自身,こちらに来るまでその存在を知らなかった.文化的には,ヴェローナやトレヴィーゾなど他の北イタリア地方と都市とあまり変わらない.
1. 食文化
アペリティーボには,プロセッコかスプリッツを好むことが多い.特徴的な郷土料理として,仔牛のレバーを使った料理『Fegato alla Veneziana(仔牛のレバー ヴェネチア風)』(写真1)や,牛の胃袋(ハチノス)を使った料理『Trippa(トリッパ)』(写真2)などが有名である.両者とも独特の味わいで,地元でも嫌っているイタリア人もいるが,特にTrippa(トリッパ)は日本で言うところのモツ煮込みに似ていて,個人的には気に入っている料理である.また,『Baccalà(バッカラ)』と呼ばれる干しダラを使った料理も有名で,こちらはパンにつけて食べると大変美味しく,アペリティーボ時のおつまみ(チケッティ, Cichetti)でよく見かけるものである.それから,イタリアのデザートとして非常に有名な『Tiramisù(ティラミス)』も,北イタリア(トレヴィーゾ)の小さなレストラン Alle Beccherie(アッレ・ベッケリエ)の若い料理人ロベルト・リングノットと、お店の女主人アーダ・カンペオルで1960年代頃に考案されたドルチェと言われる.
2. Fiare de l’oca e Zogo de l’oca(ガチョウ祭りとガチョウゲーム)
ミラーノ(Mirano)市における有名な行事としては,ガチョウ祭り(Fiare de l’oca)というお祭りがある(写真3).毎年11月中旬に行われる祭りであるが,何故この時期に行われるのかというと,11月11日が『聖マルティヌスの日』になっていて,ガチョウを食べる習わしがあるからである.イタリアには,『chi no manga oca a San Martin, no el fa el beco de un quatrin.(聖マルティヌスの日にガチョウを食べないと,お金を稼ぐことが出来ない)』という諺があるくらいだ.さて,皆さんは,Gioco dell’oca (写真4)というゲームをご存知だろうか?日本での『すごろく』に非常に似たテーブルゲームで,イタリア人であれば皆知っているものらしい(親戚や友人で集まった時によく行われるとのことである).これは,2つのサイコロを振って出た目だけコマを進め,全部で63個あるマス目に書いてある指示に従って,最終的にゴールを目指すというゲームである.このゲームを,実際の人間で行うイベント(Zogo de l’oca)も,ガチョウ祭りに合わせて開催される(写真5).ミラーノ(Mirano)市の中心部にある広場が,このゲーム(人間将棋や人間チェスをイメージしてもらうと分かりやすいだろう)を行うのに非常に適しているということで,毎年開催されている.町ごとに編成されたチームで対抗戦を行うのだ.今年は,11月14日・15日に開催予定である.ガチョウ料理を振る舞う露店も出るようで,ゲームを観戦しながらガチョウ料理を食べるのを楽しみにしている.
3. 観光スポット
北イタリアの観光地といえば,やはりヴェネチア本島が最も有名である.有名すぎるくらいなので,あえて紹介するほどでは無いと思われるが,いくつか個人的に気に入っているスポットを紹介したい.まずはリアルト橋周辺であるが,早朝に訪れると,活気のある魚市場を体験することができるのでオススメである.ヴァポレットのサンマルコ広場停留所付近から見る,サン・ジョルジョ・マッジョーレ教会やサンタ・マリア・デッラ・サルーテ教会などは,とても印象的である.天気の良い日には,是非,夕焼けの時間帯に合わせて訪れると,こちらが圧倒されるくらい美しい風景である.また,ナポレオンが世界一の広場だと評したと言われるサンマルコ広場であるが,非常に開放感あふれる広場で昼間訪れると,カフェの前で奏でられている生演奏も聞こえてきて,清々しい気持ちになる.しかしながら,個人的には日没後にも訪れて欲しい.漆黒の広場を照らすたくさんのライトにより,幻想的な雰囲気を味わうことが出来る(写真6).それから,少し滞在日程に余裕があれば,ムラーノ島・ブラーノ島そしてリド島といった離島に足を運ぶこと勧めたい.たくさんの観光客で溢れている本島とは随分と雰囲気が違い,それぞれの島の特徴を感じながら,ゆっくりと散策できるだろう.