1. 日常業務スケジュール
1日の始まりは意外と早い.8時頃から(早い日は7時半頃から)カテーテル検査・治療が始まるので,それまでに出勤している.基本的には,カテーテル室に朝から晩まで待機している.早朝にその日の症例一覧が貼りだされているので,まずそれを確認して,その日の予定をイメージする.留学当初は,当施設の手技に慣れるため,診断カテーテルや通常のPCIにも積極的に参加して助手をさせてもらうように務めた.助手をすることで,各オペレーターの癖や好みが分かるようになり,その後の仕事に非常に役にたった.また看護師とのやり取りが必要になるが,これについても助手をする時間が長いと,自然と会話する時間も増え,良好な人間関係を築くことが出来たと思う.最近は,ある程度当施設の流儀も理解できるようになり,またクリニカルフェローも数名増えたこともあって,頸動脈ステント術(CAS)や経皮的大動脈弁留置術(TAVI),腹部大動脈ステントグラフト内挿術(EVAR),左心耳閉鎖術(LAAC)などの症例の時に助手に入るようにしている.ただ,複雑なPCIやPTAの症例には助手に入るよう要請されることも多く,症例がある限り日中は手技に入っていることが多い.インターベンション用のカテーテル室が2部屋あるため,並列で手技が進行していることが多く,昼食は12-13時頃に各々取るようになっている.1,2ヶ月に1度位の頻度で,看護師さんが数種類のハムとパンを持ち寄り,パニーノを作ってくれることがある.どうやら,実家がハムやソーセージ作りをしているとのことだ.カテーテル室に勤務している人数分作るので,自家製パニーノが机いっぱいに並ぶことになる.お店で食べるものよりも美味しく,いつも心待ちにしている.パニーノフェスタが無い通常の日は,病院のバールに行き,サンドイッチやパスタを食べることが多い(2-5€程度).昼食後はまたカテーテル治療に戻る.だいたい19時頃まで症例が続く.月曜日から金曜日までが,上記のようなスケジュールである.土曜日・日曜日は完全に休みになる.当然,当施設は急患対応も行っているので,夜間や休日にも救急症例の治療は行っているが,緊急症例には基本的には呼ばれない.たまに,土・日にデータ整理などを行なっている時に救急患者が来たら手伝う程度である.スタッフがそれほど多くないためと思われるが,症例検討会やリサーチカンファレンスなどは,特に決まった曜日に行うのではなく,随時行なっている.症例の合間に突然,『何か新しい臨床研究のアイデアはないか?』と聞かれることもあるので,なかなか気が抜けない.勤務終了後には,アペリティーボに誘われることがある.アペリティーボ(Aperitivo)とは食前酒のことだが,いわゆる仕事帰りに一杯といったイメージである.同僚の話では,夕食が20-21時頃からと遅く,アペリティーボタイムはだいたい18-19時頃である.一日の仕事を終えたら,まずはバール(Bar)で軽く乾杯.ビールやプロセッコ(スパークリングワインの一種)が主流であるが,地元ヴェネト州の名物カクテル『スプリッツ(Spritz)』を飲む人も多い.日本で言うところの,「とりあえず、ビール!お疲れ様~!」といったやつに似た感覚だが,日本との違いは,そのまま長々と酔っ払うまで飲み続けないところである.チケッティ(cichetti)と呼ばれる軽いおつまみを食べながら,本当に軽く1杯だけ.ただ,飲んでいる間はひたすらおしゃべりである.次の臨床研究のアイデアを相談するような硬い話から,恋人とののろけ話まで実に多岐にわたる無駄話(?)である.小一時間ほどお酒と会話を楽しんだら,『じゃあ,また明日』とそれぞれ家路に着く.もちろん毎日アペリティーボに行くわけではないが,プライベートと仕事も一生懸命に楽しむ北イタリア人気質を感じることが出来る.