”この手続きはもう繰り返したくない…”

1. 留学までの国内での書類の流れ
基礎研究だろうが、臨床だろうが、留学の際の書類の煩雑さには辟易するものである。特に留学先が非英語圏となるとなおさらであろう。というのも、通常勤務先や大学から発行される書類は、日本語あるいは英語のみだからである。その国の言語への翻訳という過程がさらに加わるわけである。その上、臨床留学の場合は、当然、国によって異なるが、日本の医学部卒業および医師免許証に関する手続きが加わる。つまり、書類手続き上は、「非英語圏」への「臨床留学」が最もハードルが高い厄介なものと考えていいだろう。実際、悪夢のような作業であった。。。
自分の場合、VISA取得のための手続き、それから日本の医学部卒業、医師免許証はイタリアのものと比べて同等ですよ、と証明するための「等価証明」という手続きが必要であった。イタリアで収入を得ないことが前提となる就学VISAに関しては、パスポート、証明写真、留学先からの受け入れ証明書、預金通帳原本およびコピー、海外旅行保険証書、イタリアでの滞在先確保の書類、などが必要であった。中でも取得に苦労したのは、留学先からの受け入れ証明書およびイタリアでの滞在先確保の書類、である。受け入れ証明書に関しては、この後述べる「等価証明」という手続きを終えておくことが条件であった。一方、滞在先確保については、イタリア語もできないのに、どうやって賃貸契約をするのか、実際に自分の目で確かめないで大丈夫か、といったことが気になっていた。ただし、VISA取得に際しては、イタリア留学の先輩である高木健督先生(現新東京病院心臓内科)からのアドバイスにかなり助けられたことを、ここに付け加えておきたい。
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写真1

写真1をご覧いただきたい。留学先から「必要書類を揃えて、この申請書でイタリア厚生省に申し込むように」とのことで送られてきたものである。当然すべてイタリア語、困ったものである。等価証明を在日イタリア大使館にて発行してもらい、その他の書類をすべて揃えた上で、ローマにあるイタリア厚生省に申請しなければならない。その他の書類とは、大学の成績証明書、何の科目を何時間実習したか、履修プログラム(シラバス)、卒業証明書、医師免許証、行政処分関係証明書、犯罪経歴証明書、臨床研修内容/期間/修了証明書、在職証明書、各学会認定医/専門医証明書など、これらすべてを英語で書類にしてもらい、在日イタリア大使館の指定する翻訳家(宣誓翻訳家という)に最終的にはすべてイタリア語翻訳してもらわなければいけない、という途方もない作業であった。また、これらの書類がイタリアでも有効とするために、公文書は外務省にて、私文書は公証役場にて、「アポスティーユ」という証明をもらう必要があった。
これらの書類を完成させ、実際にローマの厚生省に提出するまで、実に多くの方に助けていただいた。宣誓翻訳家の方、イタリア語の先生、そして、何より書類を実際ローマで提出して下さったイタリア人の代理人の方はじめ、多くの人のサポートがなければ到底達成できることではなかった。関係各位に深く感謝している。
 
2. 引っ越しについて
”ネットで見てクリック!これで大丈夫か?”
先に述べたように、住居の契約を済ませておくことがVISA取得のための必要条件であった。まずは、一週間くらいホテルに泊まって、自分で何軒か回った上で決めたい、というのが本音であった。幸い、住居に関するオススメゾーンは留学先の友人から聞いていたので、それをあてにネットの不動産サイトで色々調べてみた。最終的には、妻がとてもいい物件を見つけてくれ、病院からも徒歩10分程度、街中心部にも近く、前に公園もあって、安全で環境も良さそうなところであった(写真2)。契約の第一歩は電話にて大家さん(写真2)と交渉、英語は通じず、さすがにイタリア語の先生に手伝ってもらって契約を進めていった。
引っ越しについては、イタリア、ましてやシチリアまで対応している業者はなかなかなく、費用も非常に高そうであったため、スーツケース2個+リュックサックに必要なものを詰め込んできた。
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写真2

3. 入国後の書類の流れ
”最大の難関、滞在許可証”
イタリアの法律上、入国後一週間以内に滞在許可証の申請をするように、とある。その通り、手続きを済ませたが、文字通り取得できたのは自分の場合、6ヶ月後、妻に至っては何と9ヶ月後であった。受け取りと同時に翌年の申請が必要となるような状況である。イタリア、特に南イタリアの役所仕事はかなりひどい。同じ滞在許可証の取得に要する期間はミラノの場合は約一ヶ月程のようだ。初年度はVISAがあったからよかったものの、VISAの有効期間が切れる二年目については滞在許可証のみが自分の滞在を正式に証明するものであるし、有効な滞在許可証が手元にないと、イタリアの外のシェンゲン国には行けないことに法律上はなっているので、これには非常に困らされた。

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大野 洋平(Catania, Italy)