1. 施設規模(症例数や特徴など)
病院は正直言って大きいものではない。アメリカにある要塞のような外観もなく、特筆すべき設備があるわけでもない。病床数も一般床32床、準ICU 5床、ICU 8床、と中規模病院である。カテ室は4室(1室はEPS用)で、うち2室はstructural heart disease (SHD) interventionも可能な構造になっている。主な手技はそれぞれ年間PCI 1200例、TAVI 150例、MitraClip 80例程度となっている。やはりFerrarottoの最大の特徴はSHD interventionが豊富にあることだろう。2007年、イタリアの施設として最初にTAVIを施行。2008年、イタリアの施設として最初に、またヨーロッパで二番目にMitraClipを施行。その他、左心耳閉鎖術、人工弁周囲逆流閉鎖術、Parachute deviceによる左室瘤閉鎖術、心房中隔欠損閉鎖術、卵円孔開存閉鎖術など、非常に多岐にわたる。限られた病床数で、これだけ多くの手技を行うための秘訣は、いかに在院日数を短くするか、である。最近の教授の口癖は、”Domani, a casa!!”(「明日、家に(帰るよ)!」)である。Sapien 3が登場してから、その傾向はさらに加速しており、最近はTAVI翌日退院も増えており、2014年に限って言えば、TAVI施行後3日以内の退院がなんと61%にまで達している。
2. ボスや同僚の紹介
”最高のボス、最高の仲間”
(1) Prof. Corrado Tamburino (写真左上)
誰からの紹介もなかった自分を一瞬の迷いもなく”Welcome!!”と受け入れてくれた器の大きいボス。常に自分のスタッフにチャンスを与え、活躍させることに命をかけている。TCTのYIAに同じ施設からwinnerを二名(後出のDtt. Davide CapodannoとDtt. Marco Barbanti)も出しているのは、世界で唯一Ferrarottoだけであり、教授のとてつもなく大きな功績である。興味あることには猛烈な勢いで迷いなく突き進む、decision-makingが極めて速い、手技もとにかく速い、などが特筆すべき点である。そして、何より最強の運も持ち合わせている。ライブデモンストレーションでは必ず成功する、とにかくそういう星の下に生まれた先生である。留学して2ヶ月も経たない5月、EuroPCRのライブでプレゼンやIVUSのコメンテーターをさせてもらったのには正直驚いた。教授の別荘に呼んでもらい、ロードバイクでのツーリングやトレッキングをしたことは一生の思い出であると同時に、完全にファミリー入りした瞬間でもあった。
(2) Dtt. Carmelo Sgroi (写真中上)
TAVIの師匠である。二年間で一番長く共に時間を過ごした人生の師でもある。というのも、こちらに来てからのTAVIほぼ全症例を共にやり、その他でも学会や旅行などを共にした。医学以外にも日本を含めた歴史、文化、ファッションなどの造詣が深く、常に冗談を言って周りを楽しませるユーモアの持ち主である。シチリア中を案内してくれ、イタリア語、さらにはシチリア語を叩き込んでくれて、自分を真のイタリア人、いやシチリア人に導いてくれた恩人である。「女性をいかにもてなし、満足させるか」を至上命題とする彼から教わったことは、大きな財産である。
(3) Dtt. Carmelo Grasso (写真右上)
MitraClip、左心耳閉鎖術、Parachuteなどの師匠である。自分より年齢がたった二つしか違わないとは思えない、雰囲気、オーラを持ち合わせている。彼の行うMitraClipの手技は、実に美しい、Artである。それを学びにイタリア中、アメリカそして日本からも多くのドクターが訪れてきた。そして、彼らに行うCarmeloの説明がまた実にクリアカットでわかりやすい。Carmeloの持つ、驚異的な世界記録device time “6 min”(MitraClipの手技において、Guiding Catheterを左房に入れてからClipを植込み、Systemを再びGuiding Catheter内に収納するまでに要する時間のこと)というのは当分(あるいは本人にしか?)破られないであろう。
(4) Dtt. Davide Capodanno (写真左下)
天才である。TCT2011のYIA受賞はじめ、数多くのAward winnerである。35歳にして、大学の准教授であり、European Heart JournalおよびEurointerventionのEditorial Boardもつとめている。そんな彼もinterventionalist。夜間、休日も緊急カテで呼ばれている。
(5) Dtt. Marco Barbanti (写真右下の一番左)
彼もまた天才である。2012-2013年にかけてVancouver、Prof. John Webbのところに留学。自分がTAVIに慣れてきたあたりでMarcoがCataniaに戻ってきて、Vancouverでの経験をshareしてくれたのは非常に幸運であった。
(6) Dtt. Guilherme F. Attizzani (写真右下の真ん中)
最初の一年間、SHDI外国人フェローという同じ立場として共に戦った心友である。ブラジル人であるが、Cataniaに来る前の二年間、ClevelandでOCTのresearchに携わっていたこともあり、彼からOCTを多いに学べたこともありがたかった。TAVI、MitraClip、BVSなどの多くの症例を共に行っただけでなく、第5回レポートに登場することになるであろう、Cataniaの一番の見所である魚市場に毎週土曜日ほぼ一年間通ったり、週4-5回ジョギングに言ったり、Clinical researchをやったり、と多くの経験を共にできたことは財産である。現在、ClevelandのHarrington Heart and Vascular InstituteでSHDIのDirectorとして活躍中である。
その他、ここに紹介しきれないくらい大勢の素晴らしい仲間に恵まれたことは、この二年間の最大の収穫であったことは言うまでもない。そして、改めて完璧なタイミングで留学できたことに、ものすごい強運を感じるのである。