Coronary plaque quantification and fractional flow reserve by coronary computed tomography angiography identify ischaemia-causing lesions
Eur Heart J. 2016 Jan 12. pii: ehv690. [Epub ahead of print]
虚血性心疾患の主たる原因は冠動脈の動脈硬化性狭窄病変で、心筋虚血の程度は狭窄の程度に比例することが知られている。しかし冠動脈病変の狭窄度以外にも心筋虚血の誘発に関与している因子が多数あることが近年注目されている。その中で本論文は冠動脈プラークの性状と心筋虚血の関連を検証した論文である。
本研究はFFR CT (心臓CTと冠血行動態のコンピュータシミュレーションを組み合わせた非侵襲的心筋虚血診断法)の心筋虚血診断精度を検証したNXT Trial (J Am Coll Cardiol. 2014;63:1145-55.)のサブスタディである。安定狭心症が疑われた患者を対象に、患者254人、冠動脈484枝のFFR CT、冠動脈造影、FFRの情報を解析している。
通常の心臓カテーテル、侵襲的なFFR計測、心臓CTでは冠動脈の解剖学的狭窄度やFFR CTに加えて、冠動脈プラークにおいてcalcified plaque (CP)、non calcified plaque(NCP)、low density non-calcified plaque (LD-NCP: CT値が<30 Hounsfield unitで定義)、aggregated plaque volume (APV%: (total plaque volume / vessel volume)*100%で定義)、positive remodeling、spotty calcificationを詳細に評価している。今回はFFRを心筋虚血のゴールドスタンダードとしてこれら指標との関連が解析された (Figure 1)。
結果、心臓CTによる解剖学的狭窄度、冠動脈のプラーク量、FFR CTはそれぞれFFRと相関することが確認された(Figure 2, 3)。
その後の多変量解析で30 mm3以上のLD-NCPが心筋虚血の発生と有意に関連していることが示された(Table)。
さらに心筋虚血診断精度において、心臓CTによる解剖学的狭窄度に、LD-NCP>30 mm3の情報、さらにFFR CTの情報を加えると段階的に診断精度が高まることが示された(Figure 4)。
一方でFFR CTにLD-NCPの情報を加えても診断精度は変わらないということも示されている。
これまでにも心臓CTによる心筋虚血診断では、単なる狭窄度の評価にプラークの質的情報を加えることで診断精度が向上することが報告されている(J Am Coll Cardiol Img 2015;8:1–10, Eurointervention. 2015 Sep 8;11(5). pii: 20140415-04. doi: 10.4244/EIJY15M09_02. [Epub ahead of print])。基本的にはそれらと同様の結果が示されたが、多施設共同研究で大きな症例数を有するデータからその結果が示されたインパクトは大きい。
ただ私としてはFFR CTの情報にプラークの質的情報を加えても診断精度が変わらないとする以前の報告と異なる点に関してもう少し詳しく論じて欲しかった。本研究におけるFFR CT解析は以前の研究時よりも新しいアルゴリズム用いていることや、β遮断薬やニトログリセリンによる前処置の徹底により心臓CT画像のクオリティ改善がその原因と説明されているが、なぜプラークの質的情報が考慮されていないFFR CTにプラークの質的情報を加えても診断精度が上昇しないのか、またFFR CT単独でも十分診断精度が高いのであればプラークの質的情報を追加解析する意義はどこにあるのかなど、もう少し議論の余地はあるように思う。
しかし裏を返せばFFR CTの高い虚血診断能を示したことにもなる。心臓CTはFFR CTの導入やその他の技術革新により1つの装置で極めてたくさんの情報が得られるモダリティに発展した。アプリケーションのみで特別な資材導入の必要性がない点も魅力的である。単なる虚血診断目的のみでなくcoronary interventionやstructural heart disease interventionのガイドとしても用いられており、日本における高い普及率などを鑑みると今後ますます発展していくことが予想される。