DEFER試験 15年フォローアップ

Deferral vs. performance of percutaneous coronary intervention of functionally
non-significant coronary stenosis: 15-year follow-up of the DEFER trial
Eur Heart J. 2015 Dec 1;36(45):3182-8. doi: 10.1093/eurheartj/ehv452. Epub 2015 Sep 23.
冠循環生理の領域で重要な試験の1つであるDEFER 試験の15年の超長期フォローアップの論文が報告されたため取り上げる。
DEFER試験とは安定狭心症患者において冠動脈造影で有意狭窄が認められた場合に、FFRを用いて心筋虚血評価を実施し、FFRで虚血陽性(FFR < 0.75)でPCIを実施したReference群、FFRで虚血陰性(FFR ≥ 0.75)でもPCIを実施したPerform群、FFRで虚血陰性(FFR≥ 0.75)でPCIを回避したDefer群の3群の予後を比較した試験である(Figure 1)。
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主要評価項目は心血管イベント(死亡、心筋梗塞、再血行再建)で、これまでに2年次、5年次の結果が報告されており、いずれにおいても心血管イベントの発生はReference群で多く、Perform群とDefer群には差がないことが報告されている(Circulation 2001;103:2928–34、J Am Coll Cardiol 2007;49:2105–2111)。DEFER試験は3群の比較試験であるが注目すべきはPerform群とDefer群の比較で、冠動脈造影で有意狭窄と考えられてもFFRで心筋虚血が否定されればPCIをしてもしなくても心血管イベントに差が認められなかった点である。この結果からFFRで心筋虚血が陰性である病変に対してPCIを回避することの正当性が証明され、この試験結果は現在の日常診療にも大きな影響を及ぼしている。
DEFER試験は、本来2年次の心血管イベントをprimary endpointに設定した試験であるが臨床的に注目度が高いため15年の超長期フォローアップを実施したとのことである。それにも関わらず今回の報告では92%と大多数の患者がフォローアップされている。15年の結果では、死亡、再血行再建に関しては3群間で差は認められなかったが、心筋梗塞がDefer群に比較してReference群、Perform群で多く認められたと報告している。さらにその心筋梗塞の発生はFFR測定もしくはPCIを実施したtarget vessel由来のものがほとんどであった(Table)。この結果から、FFRで虚血陰性の場合にPCIを回避することの正当性が超長期間においても保証されることが示され、付け加えてPCIを実施することでむしろ心筋梗塞を増加させる危険性も示された。
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本研究は1998年〜1999年に症例のエントリーが行われているためPerform群、Reference群におけるPCIはBMSもしくはPOBAで行われている。心筋梗塞の発生は主にtarget vesselで認められており、さらにPCI直後のみでなくフォローアップ期間中全体を通して増えていくことから、Peri-procedural MIに加えてBMS留置後慢性期に生じてくるneoatherosclerosisの関与が示唆される(Figure 2)。
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そのため現在の最新のステントを用いれば違う成績になるとの推察も可能である。しかしDefer群のtarget vesselにおける心筋梗塞発生率は15年間で1.1%であることを考えると、これを上回る成績を達成するのは難しいであろう。したがって現時点でもFFRで虚血陰性が示された病変に対してPCIを実施することは回避すべきと考えられる。
一方でDefer群の死亡、再血行再建はPerform群、Reference群と同等であることにも注目が必要である。FFRで虚血陰性が示されPCIを回避すれば予後良好と解釈されることが多いが、それはFFRで虚血陰性でPCIを実施した場合や、FFRが陽性であった場合と比較してのことである。Defer群の患者も決して正常ではなく冠動脈に病変を有する以上は一定の確率でイベントを起こしてくることも示している。この点は臨床において無視できない。FFR測定しPCIを回避した患者も放置できないことを示しており、PCI回避後のマネージメントに関しては今後の検討が必要である。

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塩野 泰紹(UK)