AMIによる心原性ショックに対するIABPと経皮的LVAD(Impella)の比較

Percutaneous Mechanical Circulatory Support Versus Intra-Aortic Balloon Pump in Cardiogenic Shock After Acute Myocardial Infarction.
Ouweneel DM, et al. J Am Coll Cardiol. 2017 24;69:278-287.
人工呼吸管理下のAMIによる心原性ショックに対しImpella CPとIABPの効果を比較したRCTです。結果的にこのスタディではIABPに対するImpellaの優位性を示すことはできませんでしたが、エンロール患者の92%がランダム化前に心停止をおこしており、30日フォローアップの時点で半分の患者が亡くなっていることを考えると、対象患者がやや重症すぎたような印象があります。対象患者は48人で、パワー不足という批判もあると思いますが、登録期間は3年に及んでおり、こういった重症患者を対象としたトライアルの難しさを痛感します。
[背景/方法]
AMIの心原性ショックに対し、IABPは長年にわたって最も広く使用されている循環サポートデバイスであるが、小規模研究のメタアナリシスや大規模なRCTにおいても、AMIの心原性ショックに対するIABPの効果については証明されていない。この理由のひとつとして、Impellaの台頭が挙げられるかもしれない。Impellaは最大で2.5-3.7 L/minの循環サポートが可能であり、IABPと比較するとより強力なサポートが得られる可能性が報告されている。しかしながら、過去に行われた2つの小規模RCTにおいては、パワー不足のため臨床予後の違いを証明するには至らなかった。そこで、本トライアル(IMPRESS)において、AMIの心原性ショックに対するImpellaとIABPの効果についての比較を行った。
スタディデザイン: 多施設、オープンラベル、無作為化研究。
対象: ただちにPCIが必要な、ST上昇と重度心原性ショックを伴うAMI患者。重度心原性ショックは、SBP <90 mmHgが30分以上持続する状況、もしくは、SBP >90 mmHgを維持するためにカテコラミンやバゾプレシンを必要とする状況と定義され、挿管後にランダム化が行われた。除外基準は、重度の大動脈疾患、重度の大動脈弁疾患、余命1年以下の重症疾患の合併、過去30日以内の他トライアルへの参加、1週間以内のCABG施行。
治療: Impella CPもしくはIABPに1:1で無作為割付が行われた。導入のタイミング(PCI前、PCI中、もしくはPCI直後)は術者に委ねられた(導入のタイミングも2群で公平になるよう無作為化)。すべての患者にプライマリPCIが施行され、多枝疾患患者の非責任病変治療のタイミングに関しては術者に委ねられた。Impella/IABPの使用期間については治療医師の裁量に委ねられた。クロスオーバーは認められていなかったが、実際にはクロスオーバー例が存在した(ITT解析が行われた)。
アウトカム: Primary endopointは30日の全死亡。Secondary endpointは6ヶ月の死亡。Descriptive endpointとして、人工呼吸期間、カテコラミン/バソプレシンの必要性と使用期間、RRT、入院日数、血液製剤使用量、ICD植え込み等の追加治療、LVAD導入/心移植、脳卒中発症、心筋梗塞再発症、再PCI、CABG施行、主要血管合併症、major bleeding、Impella/IABP抜去を要する溶血、再入院。
[結果]
2012年6月から2015年7月の間に、48名が登録され、Impella 群(n=24)、IABP 群(n=24)に割付けられた。患者背景は2群で差を認めなかった。92%の患者がランダム化前に心停止を認めた。循環サポートの平均時間は49時間(Impella)と48時間(IABP)であった。31%がRRTを施行され、75%が低体温療法を施行された。
30日フォローアップにおいて、死亡率に有意差は認めなかった(50% vs 46%, HR with Impella 0.96; 95% CI 0.42 to 2.18; p=0.92)。
6ヶ月フォローアップにおいても、死亡率に有意差は認めなかった(50% vs 50%, HR 1.04; 95% CI 0.47 to 2.32; p=0.92)。
年齢、性別、ROSC時間、入院時乳酸値、Impella/IABP導入タイミング、デバイス導入前血圧、入院時外傷の有無によるサブグループ解析(30日間の死亡率)において、いずれの解析においても交互作用は認めなかった。
[結論]
AMIに合併した心原性ショック患者に対するImpellaによるルーチン治療は、IABPによる治療と比較し、30日死亡率を減少させなかった。
 

 

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藤野 明子(New York, USA)