FFR及びAngio guidance PCIの比較: レジストリー研究

皆様こんにちは、CRFの清家です。
 
論文レビューも今回が最後になりました。
本日6月30日、米国ではCOVID-19は増加傾向にありますが、NYでは比較的落ち着いてきております。先週から屋外での外食が許可されており、日常が戻りつつあります。
折角ですので、ロックダウン中の子どもたちの学校の情報を少し書かせていただきます。おおよそすべての授業がon-lineに切り替えられました。実際の動画やmeetingに関しては、動画は毎日30-60分ほど配信、online meetingは2日に1回程度あります。多くの宿題が提出され、open questionの問題が多く子どもたちは苦労しながら毎日PCの前で過ごしています。我々の小学校ではGoogle Classroomが使われており、1週間の準備期間の後に立ち上げ、先生が苦労しながらなんとか運営していました。NYでは学校の先生は修士の取得が必要で、社会経験を積んでおり、ITに詳しい人が多いと思います。この点に関しては、米国の優れた点であると感じております。
さて、これまでImagingの論文が続きましたので、最後はPhysiologyの論文を選ばせていただきました。
 
今回は、
(1) Volz S et al. Survival of Patients With Angina Pectoris Undergoing Percutaneous Coronary Intervention With Intracoronary Pressure Wire Guidance. J Am Coll Cardiol. 2020;75:2785-2799.
のレビューをさせていただきます。Swedenで行われたRegistry研究で、今回の論文はFFR guidance PCIとAngio guidance PCIの2群に分け、その予後を検討した論文です。
 
【背景】
Pressure wireを用いたFFRの測定は、PCIの決定の指針となる。しかし、安定狭心症患者における長期的な臨床転帰に対するFFRの効果については、限られたデータしか存在しない。
【目的】
本研究の目的は、PCIを受けた安定狭心症患者におけるFFRの使用と全死亡率との関連を明らかにすることであった。
【方法】
2005年1月から2016年3月までの間にスウェーデンで安定型狭心症に対するPCI (FFRガイダンスの有無にかかわらず)を受けたSCAAR (Swedish Coronary Angiography and Angioplasty Registry)レジストリーの全患者を検討した。主要エンドポイントは全死亡、副次エンドポイントはステント血栓症または再狭窄とPCI中の合併症とした。
【結果】
合計で23,860例の患者が安定狭心症に対するPCIを受けた。
Table 1.
Table1
(大きな差ではありませんが、母集団が非常に多いため)おおよそすべての項目で有意差が認められた。FFR群では年齢が1歳若く、その他の因子においても相対的にhigh riskであった。
 
Table 2.
Table2
FFR群では、ステント留置数が減少した。撓骨動脈アクセス、第二世代の薬剤溶出ステント、直接ステント留置を受ける可能性が高く、完全血行再建が多かった。FFR群ではチカグレロールと低分子ヘパリンがより多く使用されたが、血管造影群では未分化ヘパリンがより多く使用された。
 
Figure 2
Figure2
FFRの使用は、2005年の8%から2016年には32%に増加し、研究期間中のFFR使用PCI施設は3%から37%に増加した。
 
Table 3, figure 3, figure 4
Figure3 Figure4 Table3
試験期間中、ステント内再狭窄またはステント血栓症の複合イベントは921件で、そのうち833件(90.5%)がステント内再狭窄、88件(9.5%)がステント血栓症(definite)であった。FFR-guided PCIは再狭窄とステント血栓症のリスクが低かった(unadjusted HR: 0.64, 95%CI: 0.50-0.82, p<0.001; Adjusted HR: 0.74, 95%CI: 0.57-0.96, p=0.022)。ステント内再狭窄またはステント血栓症の複合イベントの差は、主に再狭窄のリスクが低いことによるものであった。ランドマーク解析では、PCI後1年時点でのステント内再狭窄またはステント血栓症の複合イベントは2群間で差がなかった(Adjusted HR: 0.98, 95%CI: 0.73-1.31, p=0.906)。しかし、1年後のランドマーク後の期間では、FFR群でリスクが低かった(Adjusted HR: 0.55, 95%CI: 0.37-0.82, p=0.003)。術中合併症のリスクについては、両群間で差は認められなかった(Adjusted OR: 0.96, 95%CI: 0.77-1.19, p=0.697)。
Kaplan-Meier 解析では累積死亡率はFFR群で22.7% (95%CI: 19.6%-26.3%)、血管造影群で30.2% (95%CI: 28.8%-31.2%, p<0.001)であった。主要エンドポイントである全死因死亡率の未調整ハザード比はFFR群で低かった(HR: 0.76, 95%CI: 0.68-0.87, p<0.001)。
【考察】
FAME (2), FAME2 (3)において証明された長期の生命予後の改善効果が、大規模な観察研究である本試験においても証明された。
本研究で得られた主な所見、すなわちFFRを用いたPCIで死亡率が減少した検討に関しては、3つの最新の無作為化臨床試験-FAME 2 (3)、DANAMI-3-PRIMULTI (4)、COMPARE-ACUTE (5)などがある。FFR-guided PCIは死亡と心筋梗塞の複合転帰を減少させることが示されたが、全死亡率に差は認められなかった。FFRの使用が全死亡率を減少させるかどうかを評価するのに十分な統計的な力を有していなかったためと考えられる。
同様に、我々の研究では、血管造影ガイド下のPCIを受けた患者では標的血管再灌流のリスクが高く、結果として狭窄セグメントの数が多いことが示された。再狭窄は長期転帰の独立した予測因子であり、リスクの減少はFFR群の生存率の改善に寄与したと考えられる。
【結語】
この観察研究では、安定狭心症に対するPCIを受ける患者において、FFRの使用は長期死亡率、ステント血栓症、再狭窄のリスクの低下と関連していた。この研究は、PCI中のFFRの使用に関する現在の欧米のガイドラインを支持し、FFRが安定狭心症患者の予後に有益であることを示している。
【私見】
FFR guideにより全死亡率も含めて、イベントを減少させることが報告されました。ISCHEMIA試験(6)がNEJMに報告され、Stable anginaにおけるPCIの役割が再度見直されています。日本でも議論されていると思いますが、IVUS/OCT及びiFR/resting indexを用いたState-of-the-Art PCIが必要であると考えられます。中等度病変に関してはPressure wireを用いて適応を判断すること、治療を行う際にはIVUS/OCTを用いてPCIを行うこと、日本において行われている標準的な治療が世界のスタンダードになることが期待されます。
 
(1) Volz S, et al. Survival of Patients With Angina Pectoris Undergoing Percutaneous Coronary Intervention With Intracoronary Pressure Wire Guidance. J Am Coll Cardiol. 2020;75:2785-2799.
(2) Pijls NH, et al. Measurement of fractional flow reserve to assess the functional severity of coronary-artery stenoses. N Engl J Med 1996;334:1703–8.
(3) Tonino PA, et al. Fractional flow reserve versus angiography for guiding percutaneous coronary intervention. N Engl J Med 2009;360:213–24.
(4) Engstrom T, et al. Complete revascularisation versus treatment of the culprit lesion only in patients with ST-segment elevation myocardial infarction and multivessel disease (DANAMI-3-PRIMULTI): an open-label, randomised controlled trial. Lancet 2015;386: 665–71.
(5) Smits PC, Abdel-Wahab M, Neumann FJ, et al. Fractional flow reserve-guided multivessel angioplasty in myocardial infarction. N Engl J Med 2017;376:1234–44.
(6) Maron DJ, et al. Initial Invasive or Conservative Strategy for Stable Coronary Disease. N Engl J Med. 2020;382:1395-1407.

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清家 史靖(New York, USA)