TAVI vs. SAVR

今回で私のreviewは最終回となります。私の勝手な都合で予定よりも大幅に遅れた投稿となっており、気がつけばあと数ヶ月で留学から2年というところまで来てしまいました。一応今後についても少し報告させていただきますと、次の更新からは給与を出していただけることになりましたので、3年目も残って臨床と研究を継続していく予定としております。体感的には本当にあっという間でしたが、状況は2年前とは大きく変わってきています。
留学当初は特にこれといった仕事もなく、自分で思いついた研究を勝手に進めているような生活でしたが、徐々に色々と仕事を振っていただけるようになり、携わる研究プロジェクトは投稿中のものも含めると常時10以上ある状態になりました。最近は私自身のプロジェクトにもそれぞれに協力してくれるフェローや学生がついてくれています。研究面の仕事がかなり充実してきた&自分の臨床へのengageが増えて手が足りなくなってきたので、日本からさらにもう一人フェローを取っていただけることになり、9月からは三井時代の後輩もチームに参加してくれる予定です。今後はしっかり手技のトレーニングを積みつつ、研究はやりたいことがまだまだあるので、スピードを上げてどんどんやっていきたいと思います。
さて今回は最後のreviewということで、内容にとても悩んだのですが、せっかくなので最近の仕事の内容(TAVI textbook)と絡めたところで、”TAVIかSAVRか”という非常に重要なトピックの一つについてreviewさせて頂きたいと思います。
ご存知の通り、昨年(2019年)ついにsurgical low-riskの患者においても、TAVI vs. SAVRの1-2年時点でのnoninferiority/superiorityが証明され(1,2)、もはやTAVIかSAVRかの選択において、surgical riskは決定因子ではなくなりました。これまでのRCTのメタ解析(3)によれば、surgical riskに関係なく、TAVIはSAVRと比べて2年時点での全死亡を12%、脳卒中を19%低下させており、SAVRと比較して侵襲が低いという明確なメリットも持つTAVIは、今後も適応を大きく拡大させていくことが予測されます。一方で、まだTAVIが完全なSAVRの代替として確立されたわけではなく、今後解決していかなければならない課題が多数存在しています。
 
1) RCTの除外基準であった複雑な解剖学的条件を持つ患者に対する治療成績
TAVIは、段階的なRCTと大規模なreal world registry dataによって、非常に洗練された形でevidenceが蓄積されてきた領域だと思います。ただ少なくともRCTにおいては、例えばbicuspid valve (4)や、excessive/no calcification (5)の症例など、解剖学的にTAVIに不向きな症例は基本的に除外されていたということは、しっかりと認識されておく必要があります。つまり現状でわかっていることは、“解剖学的にTAVIに比較的有利な症例においては、transfemoral TAVIがSAVRに対してsuperior/noninferior”であって、そうでない場合は“unclear”であるということです。
BicuspidやAV/LVOT calcificationが強い等の場合に、TAVIがSAVRと同等の成績を出せるのか、どの程度、あるいはどういう形態であればTAVIで治療ができるのか、デバイスの使い分けで対応ができるのか、このあたりはまだまだ研究が必要であり、現状は症例ごとに慎重に検討する必要があります。LVOT calcificationに関して、最近BernのデータをJACC CVIで報告しましたので、ぜひ参考にして頂ければと思います(5)。年内には解剖学的条件に絡めたトピックでまた別の報告もできると思います。
また、冠動脈疾患が併存している場合(6)や、他の弁膜症を合併している場合(7)も、一期的に外科手術で治療するのか、他のカテーテル治療と合わせて治療するのか、あるいは経過をみるのか、まだまだデータが不足しており、少なくとも現状は症例ごとの判断が必要です。弁膜症に関しては、最近JACC CVIからreview(8)を出しましたのでこちらもぜひ参考にして頂ければと思います。
2) 術後のconduction disturbancesとparavalvular leak (PVL)
現状、SAVRと比較した場合のTAVIの明確なデメリットとして、術後のconduction disturbancesとPVLの頻度の高さが挙げられると思います。
術後のpacemakerに関しては、RCTのメタ解析において、SAVRと比較してBalloon-expandableで23%、Self-expandingで131%の相対リスクの上昇が認められています(3)。この合併症としてのconduction disturbancesが、実際にどれほど患者さんに臨床的な影響を与えるのかについてはまだまだ研究が必要な領域ですが、現時点で別の大規模メタ解析の結果において、TAVI後のnew pacemakerは17%、new LBBBは32%の1年時点での全死亡の相対リスク上昇を示しています(9)。デバイスやテクニック、患者選択の向上などによるリスク低減の努力が続けられていますが、現時点ではconduction disturbancesのリスクは、TAVIかSAVRかの選択において必ず考慮される必要があると思います。
Pacemaker riskの低減に関して、NYU Langone Healthからの報告は非常に興味深いと思います(10)。これに関連しても現在、multi-centerで別の研究を進めています。
PVLに関しては、TAVIの大きなdisadvantageとしてよく認識されていますが、CTによる計測技術の向上と、outer skirtなどのデバイスの向上によりかなりのリスク低減がなされてきています。直近のlow risk trialsにおいては、moderate以上のPVLはSAVRと比較してSAPIEN3で0.8% vs. 0%、Evolut R/PROで3.4% vs. 0.4%とあまり遜色のないデータが出てきています。一方で、これらのRCTにおいても、mild以上の PVLは39.6% vs. 5.5% (PARTNER3), 37.6% vs. 3.1% (Evolut low risk)と、まだまだ高い頻度となっています(1,2)。このmild PVLはPARTNER 2Aの5年時点では全死亡に有意差を与えていませんが、Kaplan-Meier curveは3年時点から徐々にseparateしてきており(11)、より若年、低リスクの患者での長期予後への影響は今後詳細に検討していく必要があります。術前のARや左室の状態が保護的に働く可能性も報告されており(8)、そのあたりの層別化も今後一つの鍵になるかもしれません。PVLに関しては、これまでにもかなり色んな報告が出ていますが、まだまだ研究の必要な領域であり、この話題に関しても、我々の切り口でさらなる研究を進めています。
3) Durability含む長期成績と再治療(Redo TAVI)
Surgical low-riskまで段階的に適応を拡大してきたTAVIですが、これらのRCTを通して、対象患者年齢は80歳前後、直近のlow risk trialsでも75歳前後であったことはしっかり認識しておく必要があります。
もともとASで手術適応となる患者の過半数は75歳以上であるという点は指摘しておきますが、いずれにせよ5年を超える長期予後のデータ、Durabilityに関するデータ、再治療(Redo TAVI)のデータが現時点では不足しており、比較的若年層への適応には慎重になる必要があります。
最近PARTNER 2A、NOTIONの5-6年のデータが示され、少なくともこの時点ではtransfemoral TAVIはSAVRと比較して同等と言えそうです(11,12)。Durabilityに関しても、およそ8年時点でのStructural valve deterioration(SVD)は約3-10%程度、Bioprosthetic valve failure(BVF)は約2.5-7.5%程度と報告されており(13)、NOTION trialの結果からは少なくとも6年時点で、BVFに有意差はなく(7.5% vs. 6.7%, P=0.89)、SVDはむしろSAVRで有意に多い(4.8% vs. 24.0%, P<0.001)という結果になっています(12)。感染性心内膜炎のリスクに関しても最近複数の報告が出てきており、最初の1年は約1.5%程度、その後約5-8年のフォロー期間で0.4-0.8%/year程度のリスクであり、こちらもSAVRと遜色ないと言えそうです(14,15)。Durabilityに関しては、SAVRの方も堅いデータがあまりないので、これだけでは少なくともSAVRを積極的に選択する理由にはならないと思いますが、先程挙げたconduction disturbancesやPVLが、5年以降の長期予後にどの程度の影響を与えていくのかはまだ不明ですし、比較的若い患者さんに対するTAVIに関しては、このあたりの“unknown”をしっかり認知した上で検討する必要があります。
さらに、若年、低リスクの患者さんに対して治療を行う場合、その先の再治療の可能性も視野に入れておく必要があります。SAVRでもTAVIでも、生体弁を使用している以上は、少なくとも約10-15年程度で再治療が必要となることが予測されます。SAVRに関しては、従来通りのRedo-SAVRに加え、以前のreviewで紹介したとおり、TAVIによるValve-in-valveも非常に有効な治療として確立されてきており、すでに5年時点までの報告がVIVD registryから出されています(16)。一方でTAVI弁に対するvalve-in-valve (Redo TAVI)に関しては、まだまだデータが不足しており、最近JACCからpublishした212例のRedo TAVR registryが最大の報告になっています(17)。ここまでの報告から、Redo TAVIは少なくとも1年時点まで、比較的安全で、有効な治療と言えそうですが、長期成績はもちろん、その後のCoronary accessの問題など、今後詳細に検討していかなくてはならない問題がまだまだあります。
2019年のlow risk trialsの結果を経て、“SAVRができないからTAVI”という時代は終わりました。逆に、TAVIかSAVRかの選択は、このlow risk trialsを経てさらに悩ましいものになったように感じます。機械弁を選択する場合には自動的にSAVRとなりますが、それ以外の場合では常に、年齢、解剖学的条件、併存疾患、患者さん自身の好みなど、個々の要素を総合的に検討していく必要があり、システマティックな振り分けは基本的に不可能です。そしてまだまだ今後も、治療技術や患者選択の進歩、デバイスの進化によりこの選択は経時的に変化していくことが予測されます。それぞれの施設のHeart Teamには、引き続きこの領域での情報のupdateを怠らず、それらを踏まえた上で常に柔軟に、bestな治療選択をしていく努力が必要とされています。
 
参考文献
(1) Mack MJ, Leon MB, Thourani VH et al. Transcatheter Aortic-Valve Replacement with a Balloon-Expandable Valve in Low-Risk Patients. N Engl J Med 2019.
(2) Popma JJ, Deeb GM, Yakubov SJ et al. Transcatheter Aortic-Valve Replacement with a Self-Expanding Valve in Low-Risk Patients. N Engl J Med 2019.
(3) Siontis GCM, Overtchouk P, Cahill TJ et al. Transcatheter aortic valve implantation vs. surgical aortic valve replacement for treatment of symptomatic severe aortic stenosis: an updated meta-analysis. Eur Heart J 2019;40(38):3143-3153.
(4) Makkar RR, Yoon SH, Leon MB et al. Association Between Transcatheter Aortic Valve Replacement for Bicuspid vs Tricuspid Aortic Stenosis and Mortality or Stroke. JAMA 2019;321(22):2193-2202.
(5) Okuno T, Asami M, Heg D et al. Impact of Left Ventricular Outflow Tract Calcification on Procedural Outcomes After Transcatheter Aortic Valve Replacement. JACC Cardiovasc Interv 2020;13(15):1789-1799.
(6) Sondergaard L, Popma JJ, Reardon MJ et al. Comparison of a Complete Percutaneous versus Surgical Approach to Aortic Valve Replacement and Revascularization in Patients at Intermediate Surgical Risk: Results from the Randomized SURTAVI Trial. Circulation 2019.
(7) Okuno T*, Asami M*, Khan F et al. Does isolated mitral annular calcification in the absence of mitral valve disease affect clinical outcomes after transcatheter aortic valve replacement? Eur Heart J Cardiovasc Imaging 2019.
(8) Khan F*, Okuno T*, Malebranche D et al. Transcatheter Aortic Valve Replacement in Patients With Multivalvular Heart Disease. JACC Cardiovasc Interv 2020.
(9) Faroux L, Chen S, Muntane-Carol G et al. Clinical impact of conduction disturbances in transcatheter aortic valve replacement recipients: a systematic review and meta-analysis. Eur Heart J 2020.
(10) Jilaihawi H, Zhao Z, Du R et al. Minimizing Permanent Pacemaker Following Repositionable Self-Expanding Transcatheter Aortic Valve Replacement. JACC Cardiovasc Interv 2019;12(18):1796-1807.
(11) Makkar RR, Thourani VH, Mack MJ et al. Five-Year Outcomes of Transcatheter or Surgical Aortic-Valve Replacement. N Engl J Med 2020;382(9):799-809.
(12) Sondergaard L, Ihlemann N, Capodanno D et al. Durability of Transcatheter and Surgical Bioprosthetic Aortic Valves in Patients at Lower Surgical Risk. J Am Coll Cardiol 2019;73(5):546-553.
(13) Testa L, Latib A, Brambilla N et al. Long-term clinical outcome and performance of transcatheter aortic valve replacement with a self-expandable bioprosthesis. Eur Heart J 2020;41(20):1876-1886.
(14) Bjursten H, Rasmussen M, Nozohoor S et al. Infective endocarditis after transcatheter aortic valve implantation: a nationwide study. Eur Heart J 2019;40(39):3263-3269.
(15) Stortecky S, Heg D, Tueller D et al. Infective Endocarditis After Transcatheter Aortic Valve Replacement. J Am Coll Cardiol 2020;75(24):3020-3030.
(16) Bleiziffer S, Simonato M, Webb JG et al. Long-term outcomes after transcatheter aortic valve implantation in failed bioprosthetic valves. Eur Heart J 2020.
(17) Landes U, Webb JG, De Backer O et al. Repeat Transcatheter Aortic Valve Replacement for Transcatheter Prosthesis Dysfunction. J Am Coll Cardiol 2020;75(16):1882-1893.

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奥野 泰史(Bern, Switzerland)