TCT 2019 速報

皆様、こんにちはCardiovascular Research Foundationの清家です。
今回は注目の論文をテーマとしていただきました。ちょうど先週までCRFが主催するTCT 2019 San Franciscoに参加させていただいておりました。今回TCTでは、発表と同時にNEJMに掲載された発表が二つありました。
TWILIGHT試験(1)と、EXCEL試験の5年成績(2)です。今回はこの二つの紹介をさせていただきたいと思います。
 
TWILIGHT試験は、High risk PCIの患者を対象として、下の図のように3か月でチカグレロール(ブリリンタ)単剤SAPT、及びチカグレロール+アスピリン投与群DAPTに2群に分類するrandomized, double-blinded, placebo-controlled trialとなっております。
twilight
この研究におけるHigh risk PCIは、出血合併症のリスクもしくは虚血リスクのどちらか一方を有するとされており、具体的には
Clinical Criteria:
65歳以上、女性、トロポニン陽性のACS、血管疾患の合併(MIの既往、PAD/CADに対するインターベンションの既往)、薬剤により治療されている糖尿病、慢性腎不全(eGFR<60 ml/min/1.73m2)です。
Angiographic Criteria:
多枝病変、Total stent length >30 mm, 血栓病変、分岐部病変(2つ以上のステントが必要で、Medina X, 1, 1)、Atherectomyを必要とする石灰化病変です。
Primary Endpointは出血で、BARC2, 3, 5のいずれか
Secondary Endpointは虚血イベントで、非致死性心筋梗塞、脳梗塞、全死亡のいずれかになります。
Primary Endpointを出血のみとされております。
BARC分類は、
分類2: 明らかに医学的に対応すべき出血で、非外科的介入を要するもの、入院またはケアレベルの引き上げを要するもの、もしくは評価を要するもの
分類3: ヘモグロビンが3g/dl以上低下、もしくは頭蓋内出血
分類5: 致死的出血
と定義されております。
7,119症例がエントリーされ、チカグレロール単剤群3,546例、チカグレロール+アスピリン群3,564例が解析されました。
結果は以下の通りになっています。
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ご覧いただいた通り、High risk PCI症例に関して、チカグレロールを用いた3か月以降SAPTでは、虚血性合併症を増やすことなく、出血性イベントは低下するとの結論でした。
STOP-DAPT2 (3)等の結果もあり、今後DAPTは短期間になっていく傾向に拍車がかかったのではないでしょうか?
しかし、超High risk PCI症例に関しては、今だ臨床的には疑問が残る症例もあります。また、先日NEJMでISAR REACT5(4)の結果が示されました。ST上昇の有無を問わない急性冠症候群患者の治療では、プラスグレル(エフィエント)はチカグレロルと比較して、1年後の死亡、心筋梗塞および脳卒中の複合の発生率が有意に低く、大出血の発生率は両群間に差はないという結果が、公表されました。
短期間DAPTのTrialでも、それぞれプロトコルにおける薬剤の種類、Short DAPT期間、人種差、手技背景の違いがあり、またアスピリンには圧倒的に薬価が安いというメリットもあります。また、本邦での特徴としてIntracoronary Imagingの使用率が圧倒的に高く、90%以上の症例に使われており、欧米を基準とした患者群に比し、虚血イベントの発生率が低いことも考えられます。
どの薬剤を用いて、どのように短期DAPTとしていくのか、今後さらに議論が進められることと思います。
 
引き続きまして、EXCEL5年の結果を示させていただきたいと思います。
EXCEL試験は、左冠動脈主幹部病変の治療について、SYNTAXスコアが低~中スコアの患者ではエベロリムス溶出ステント(Xience)留置を伴う冠動脈インターベンション(PCI)が、3年Followで冠動脈バイパス術(CABG)に対し非劣性であることが、TCT2016, NEJM (5)ですでに報告されており、今回のTCTではその5年の報告でした。
3年報告での結果が以下になります。
excel 3 yrs
ご覧のように、初期成績はPCIが優れており、ややその後のイベントはCABGに比し、PCIが多くなっていく印象があり、5年に延長されたとき、その結果がどうなるかということが、世界中で注目されておりました。
研究デザインは、LMに有意狭窄を有する、SYNTAX Score 32点以下の症例を、PCI vs CABGの2群にランダマイズし、Primary Endpointを死亡、脳梗塞、心筋梗塞とし予後を比較しております。しかし、実際にCore Lab解析を行った結果、おおよそ25%はHigh SYNTAX Score (>33)となっております。
PCIが948例、CABGが957例にrandomizeされましたが、それぞれ5年においても90%以上のfollow-up率となっております。
結果は以下の通りです。
excel 5 yrs
なんとかPCIが持ちこたえたというところでしょうか。5年までは、CABGとPCIに有意差がないという結論になっております。
EXCEL試験に関しても、IVUSの使用率は77%と、本邦と比較すると低くなっております。中等度のSYTAX ScoreのLM病変に対するCABGとPCIの予後に有意差はないということですが、Intracoronary Imagingの使用等でPCIの予後が改善することが期待されます。
同じくTCT2019で発表されましたIDEAL-LM(6)というヨーロッパの施設で行われた、LM病変に対するSynergyステントとXience Stentを比較した試験が発表されましたが、何とIVUS使用率は40.8%でした。LMのステント留置に関しては、欧米でももう少し高い率でIVUSは使用されていると思っていたのですが、LMに対してさえもまだまだIntracoronary Imagingは十分に使用されていないという結果でした。
 
TCT2019速報という形で、今回は注目の論文を取り上げさせていただきました。TCTではCRF留学の一年目は多くの先生がFACTOIDという仕事があります。
コロンビア大学とマウントサイナイ病院のIntervention Fellowの先生方と一緒に、ライブ症例提供される下の画面にある左右の情報スライドを準備する仕事です。
IMG_9323
朝8時の症例から、夕方6時の症例まで、お昼休みを挟んで、続けて仕事をこなし、翌日のLiveのための準備もあるためかなり疲れました。日本の先生方といろいろ話せるのではないかという期待があったのですが、その時間を多くとることは出来ませんでした。
しかしながら、この大きな学会の運営にかかわれたということは良い思い出です!TCTでライブ会場では、最後方で日本人フェローが仕事をしております。是非、TCTに来られた際には会場運営をしている日本人フェローに声をかけていただければと思います。
TCT2019では、日本の先生方にSUNRISEの記事見てますよと声をかけていただきました。引き続き、よろしくお願いいたします。
 
清家 史靖
Cardiovascular Research Foundation/ Columbia University Medical Center
 
References
(1) Mehran R, et al. N Engl J Med. 2019 doi: 10.1056/NEJMoa1908419.
(2) Stone GW, et al. N Engl J Med. 2019 doi: 10.1056/NEJMoa1909406.
(3) Watanabe H, et al. JAMA. 2019;321:2414-2427.
(4) Schüpke S, et al. N Engl J Med. 2019 doi: 10.1056/NEJMoa1908973.
(5) Stone GW, et al. N Engl J Med. 2016;375:2223-2235.
(6) van Geuns RJ, et al. TCT 2019