留学生活;今年を終えて
私は、2013年10月からMassyに留学しており約1年半が経ちます。本当にあっという間に時間が過ぎ、こちらに来たのが昨日のような感じです。ただよくよく振り返ってみると、当然のことながら来た時と比較していろいろ変わって来ている面もいくつかあることに気づきました。
Coronaryの分野では、やはりBVSの使用を考慮する機会が増えてきました。それもsimple lesionだけでなく、分岐部病変、LMT病変などにも使用する機会が増えて来たように思います。それに伴い、分岐部病変に対するstrategyとして、これまでのfinal kissingに変わり、POT-side-POTという新たなstrategyが多用されつつあります。POTというのはpost optimization techniqueという当院で多く用いられている分岐部病変に対するstrategyになります。分岐部にステント留置した後、側枝のワイヤーをリクロスする前に、分岐の手前だけNC balloonを用いて拡張することで、側枝の入口部へのステントの圧着を良好なものにするtechniqueです。これまではPOTをした後、ワイヤーを側枝にリクロスし、final kissingをして終了というのが、standardな戦略でした。しかし、BVSでは通常kissingは避けるべきとされています。というのもkissingによりBVSの構造が壊れてしまう可能性があるからです。BVSを分岐部に留置した後、まず1回目のPOTを施行、その後ワイヤーを側枝にリクロスして、側枝方向にballooning、その後再度分岐の手前にPOTをして終了というstrategyになります。これはBVS用のstrategyでしたが、最近では分岐部への通常のステント留置の際にも用いられるようになってきました。どちらが良いのかは今後様々なデータが出てくると思います。
TAVIに関しては、最近はまずSAPIEN 3が第一選択で、何か特別な理由があるとき、例えば、coronary heightの問題であるとかA弁の石灰化が強いような症例ではCoreValveを使用するというスタンスが確立してきたように思います。これが今だけなのか、もしくは当施設だけなのかわかりませんが、スタンスとしては明確でわかりやすいかなと思っています。日本においてもCoreValveが導入間近だと思いますが、どのように使い分けていくかに関しては、よく検討していく必要があると思われます。またCoreValveの次世代である、Evolut RはCoreValveの欠点を補うべく、かなり性能も成績も向上している印象ですし、Lotus含めた新たなデバイスも今後導入されると思います。このような新たなデバイスの動きも注目していく必要があるかと思います。さらに適応に関しても、当施設ではどんどん若年化が進んでいるように思います。そしてlow risk症例に対しても積極的に適応を検討している傾向にあるかと思います。日本においても適応は徐々に拡大する可能性はあるかと思いますが、これに関しても十分検討を加えた上で考えていく必要があるかと思います。
いずれにしても、残りの留学期間もあとわずかですので、一つでも多くの事を学んで日本に帰りたいと考えています。