L’uomo fortunato

二年間の留学が今まさに終わろうとしている。振り返ってみても、実に様々な経験に恵まれた。それは、当初の「SHD interventionを学ぶ」という枠を大きく上回るものであった。そして何よりこの二年間を一生涯忘れられないものにさせてくれたのは、とにかく「人」との出会いである。好きなように手技、臨床研究、学会発表など何でもやらせてくれたTamburino教授、常に手技のサポートをしてくれたスタッフ、看護師、技師さん、共に切磋琢磨した他のフェロー、それだけに留まらず、大家さん、イタリア語の先生、近くのパン屋のおばちゃん、Barの店員さん、魚市場のみんな、文字通りみんなが家族の一人の如く大切にしてくれた。自分が担当した患者さんにとても感謝していただき、食事に呼んでもらったこともあった。おそらくこの感覚は正直、地球上の他の場所ではなかなか味わうことができない、ここCatania、Sicilia独特のものではないかと思っている。教授、スタッフ、フェローや友人の家にも数えきれないくらい呼んでもらったし、シチリア中も車で連れていってくれたり、旅行も一緒にしたりした。本当にみんなには心から感謝している。
このように多くの人と仲良くできたのは、やはりイタリア語をしゃべれるようになったからであろう。人と人とのつながりをつくるのは、やはりコミュニケーションである。そして、コミュニケーションの基本は面と向かっての言葉を用いたコミュニケーションである。間違ったっていい。大事なことは、しゃべろうとする姿勢なのではないか。英語と比べてはるかに文法も複雑で難しいイタリア語を間違えないで話せるようになるまで待っていたら留学生活はおろか、自分の人生も終わってしまいそうな程である(笑)。英語を練習したいフェローとは、自分に英語で話してもいいけど、自分はイタリア語を話すよ、と言って実際そうしていたので、周りからしてみればおかしな光景であったことであろう。ようやく患者さんにイタリア語でカテの結果説明などもスムーズにできるようになってきたところで帰らなければならないのは、ものすごく後ろ髪を引かれる思いだが、自分がこちらで学んだことを今度は日本の患者さんに還元したいと思っている。
なぜ留学するのか?もちろん新しい技術、知識などを学ぶためであることは言うまでもないが、その国、地域の人間になりきって、医療、文化、歴史などを幅広く学び、「人間力」を身に付け、生涯を通して付き合えるかけがえのない仲間を得る事が何よりも重要だと考えている。そして、「もしもう一度留学するなら?」と聞かれたら必ずやこう答えるであろう、「”Ferrarotto”に行きたい」と。そう自分は本当に幸せな男、”L’uomo fortunato”なのである。

写真1:休日緊急カテの後にカテ室で振る舞われたムール貝のワイン蒸しには驚かされました。。。

写真1:休日緊急カテの後にカテ室で振る舞われたムール貝のワイン蒸しには驚かされました。。。


写真2:TAVIチームで教授の別荘に!

写真2:TAVIチームで教授の別荘に!


写真3:最高の仲間との手技は本当に楽しかった。一生の宝物です、感謝、感謝、感謝!!!

写真3:最高の仲間との手技は本当に楽しかった。一生の宝物です、感謝、感謝、感謝!!!

y_ohno
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大野 洋平(Catania, Italy)