この流れはいずれやってくる

狭心症状を訴える症例に対する冠動脈CTの活用はすでに日常的なものとなっている。診断能、特に陰性的中率は100%に近く、CTでツルツルな冠動脈が示されると確信をもって「冠動脈はきれいです」と患者さんに説明することができる。しかし、時として石灰化や冠動脈の屈曲によっては判断が悩ましいことがある。そうなると患者背景や他のモダリティといった判断材料を用いて、最終的にはカテーテル検査に進んでいく。
今回ピックアップする論文はそんな日常的に活用する冠動脈CTとMachine Learning(ML)による予後予測を検討した報告です。
Eur Heart J. 2016 Jun 1. pii: ehw188. [Epub ahead of print]
Machine learning for prediction of all-cause mortality in patients with suspected coronary artery disease: a 5-year multicentre prospective registry analysis.
Motwani M, Dey D, Berman DS, Germano G, Achenbach S, Al-Mallah MH, Andreini D, Budoff MJ, Cademartiri F, Callister TQ, Chang HJ, Chinnaiyan K, Chow BJ, Cury RC, Delago A, Gomez M, Gransar H, Hadamitzky M, Hausleiter J, Hindoyan N, Feuchtner G, Kaufmann PA, Kim YJ, Leipsic J, Lin FY, Maffei E, Marques H, Pontone G, Raff G, Rubinshtein R, Shaw LJ, Stehli J, Villines TC, Dunning A, Min JK, Slomka PJ
この研究はCONFIRM registryに登録された狭心症を疑われる10,030人を対象にした5年間のフォローアップで行われています。主要アウトカムは全死亡(All cause mortality;ACM)、エンドポイントはACMまでの期間になります。
MLでの診断を行う上で、詳細は下記に示しますが患者背景、各リスクスコア、CT所見を基にスコアリングを行ったML Scoreが用いられています。
Paper Review5-1
結果はACMの予測においてMLは他のスコアリング単独のものに比べて非常に良い結果となりました。
Paper Review5-2
(ML; Machine Learning, FRS; Framingham Risk Score, SSS; Segment Stenosis Score, SIS; Segment Involvement Score, DI; modified Duke Index)
Paper Review5-3
AIはシステムの進歩とともに実際の法的整備が追い付いていない側面が多いですが、将来的に実臨床へ徐々に導入されていくことでしょう。IBMのWatsonを始め、各施設、各メーカーで開発にしのぎを削りあっているのが現状で、下記リンクの記事をぜひご一読いただければまんざら遠い未来の話ではないことがおわかりになるかと思います。
https://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/15/121900063/?ST=health&P=1
一方、画像診断、治療方針の決定、そして今回のような予後の推定などAIの精度、利便性が向上していく潮流にあっても、やはり医師の果たす役割は大きいでしょう。特に日本においては医師患者関係に重きが置かれることと思います。我々医療従事者がAIをどのように活用していくか、現実的に考えなくてはいけない時期が来ていると感じます。

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伊地知 健(Los Angeles, USA)