レジストリデータベースを研究ツールから次のステップへ

現在、留学を開始して約半年が経過しており、予定では残り2年半という状況です。留学前は、臨床研究、特にレジストリ研究を深く勉強し、レジストリ研究の持つ可能性を追求したいという目標を持っていました。幸運なことに留学先では、様々なレジストリ研究に携わることができ、そのデータ収集に関する方法、精度の管理、プロポーザルの提出とその評価、アウトプットの出し方など多く実務的な内容を学ぶことができています。さらに、レジストリ研究を用いた実臨床へのフィードバックや、医療の質の向上に向けた取り組み、レジストリ研究をベースとしたRCTの施行への応用などといった、レジストリの持つ潜在能力に関しても実感することができました。こうした留学先での経験は、まさに自分も求めていたものであり、こうした経験は必ずや帰国後も生きてくると信じています。
一方で実際に留学し、色々と学ぶ中で、様々な葛藤も生まれてきました。特に感じることは、現在の施設で行われていることをどのようにして日本に還元することができるかということです。留学先の施設は、Academic Research Organization (ARO)として確固とした地位を築いており、臨床研究を行う上での、ありとあらゆるインフラが整備されている状況です。日本において、このような施設を作り上げることは、金銭面や様々な側面から不可能に近いことのように思います。残りの留学中のテーマは、できるだけ現在の施設における臨床研究実践のノウハウを吸収して、日本に還元する手段を模索することだと思っています。
現時点で帰国後のビジョンを明確にすることはできませんが、日本の臨床研究を取り巻く環境を少しでも良くできればと思っていますし、レジストリデータベースを研究ツールから次のステップに発展させ、実臨床に生かすような仕事ができればと思っています。そのために残りの2年半、できるだけ多くのプロジェクトに携わり、自分の中での臨床研究の引き出しを増やしていきたいと思います。

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猪原 拓(North Carolina, USA)