充実した教育体制

  1. 日常業務スケジュール

基本的な就業時間は朝9時から夕方17時までですが、いつ出勤していつ帰るかはFellow次第といった感じです。特にDuke大学のClinical fellowを兼任している場合には、当然ながらかなりの時間を病院で過ごすようで、ほとんどDCRIでお目にかかることのない同僚もいます。全体的に夕方以降も残っているFellowは疎らで、週末は施設全体がガラーンとしています。
 
日常業務は、
・各種MeetingおよびConferenceへの参加
・研究に関する系統講義(Clinical Research Training Program)への出席
・臨床研究業務(Adjudicationなど)
・各自の研究の遂行
といった内容です。
 
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表:1週間の予定
 
Research fellowは各種のProjectに割り当てられており、それに関連したMeetingに参加する必要があります。このProject meetingでは、Clinical research coordinator、Statistician、Programmerといった職種とともにProjectの進行状況の確認、問題点があればそれに対する対応、提出されたProposalの検討やそれに基づいた解析の遂行などが話し合われます。
 
またFellows’ conferenceと呼ばれる臨床研究に関連した教育目的のConferenceや、DCRI research conferenceと呼ばれるFellowのみならず他職種も含めた施設全体のConference、Duke cardiologyで行われるClinical conferenceやGround roundにも参加することになっています。Fellows’ conferenceでは、Statisticianから研究計画書や解析計画書の書き方を学んだり、CirculationやJAMAのEditor-in-chiefを招いて、どのようにAcademic careerを築いていくかに関する議論を行ったりしました。また、Duke cardiologyのClinical conferenceも継続して参加しているとかなりのTopicに関して系統的に学ぶことができ、米国での診療の実際を垣間見ることができます。
 
またDCRIのResearch fellowshipの特徴として、臨床研究の系統講義を受けることができるという点があります。Clinical Research Training Program(CRTP)と呼ばれ、希望をすれば2年間のResearch fellowship在籍期間中にMaster of health scienceのDegreeも取得することができます。自分はNon-degree studentとして、学びたい講座だけ聴講する形式にしています。授業の内容として、基本的な臨床研究のデザインや統計解析から、Cost-effective analysisやImplementation and dissemination scienceといった高度な内容まで含みます。米国の授業らしくSmall groupでのDiscussionや実際に研究計画の立案、それに基づいたプレゼンテーション、研究計画書の提出といった内容になっていてなかなか大変です。Master of public healthとも異なり、ここまで臨床研究に特化したProgramは日本国内で受講することは難しいと思いますので、これも非常に良い機会と思っています。
 
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写真:CRTPの授業の様子。NIHとも繋いで同時に授業を行っています。
 

  1. 業務・研究内容

主たる業務としては、Adjudicationがあります。これは担当しているprojectにおいてイベントが各施設から報告された際に、それがイベントに該当するか、該当する場合にはどのイベントに分類されるかといったことを判定する業務です。報告された内容だけで判定が困難な場合には、カルテ内容を取り寄せて、それに基づいて判定を行います。RCTでは一般的な作業かと思いますが、Registry研究においても(RCTほど複雑でないにしても)Adjudicationをしっかりと行っており、研究の質の向上につながっていると言えます。
研究の内容としては、ACSおよびPADに関連したRCTのSecondary analysisや、米国のNational RegistryであるNational Cardiovascular Data Registry(NCDR)の各種レジストリ(CathPCIやTVTなど)を用いた解析を進めています。
研究において、DCRIでは非常に大きな特徴があります。それは、自分自身がデータに触れることは決してないということです。研究のプロセスとしては、とあるデータを用いて研究をしたいと思った場合には、まず研究計画書を作成し、研究資金の獲得を目指します。Mentor曰く、「You can’t do anything without money」です。研究費が獲得できたら、解析計画書(Statistical analysis plan: SAP)をStatisticianとともに作成します。全ての解析はこの解析計画書に記載された通りにStatisticianによって施行されます。Fellowは、その結果をもとにAbstractやPaperを書くことになります。このプロセスはRCTのSecondary analysisであっても、Registry dataを用いたObservational studyでも一貫して、解析計画書の精密さおよび厳格さには本当に驚かされます。日本では自分で解析をすることに慣れていたので、当初はこのプロセスに非常に煩わしさを感じていましたが、DCRIでは研究の質を向上させるためには必須のプロセスと考えられており、色々な話を聞くうちに納得するようになりました。興味のある方は、是非、JAMA. 2012;308(8):773-774.を読んでみてください。世の中の流れも、確実のこちらの方向に向かっているように感じます。

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猪原 拓(North Carolina, USA)