留学を開始してからちょうど8ヶ月が経過しました。これまでの留学を振り返ってみてはっきりと言えることは「留学に来て良かった」ということです。
研究面では、本当に多くのことを学んでいます。
まず研究チームの重要性です。日本ではコーディネーターはいても研究チームに統計家もプログラマーもいないこともしばしばです。こちらの研究チームはそうした多職種が上手く調和して、臨床研究に関する様々なinnovativeなことを展開しています。また共著者との関わり方も大きく異なるように思います。日本では残念ながら共著者が形骸化してしまっていることもしばしばですが、こちらでは共著者が有機的に機能しています。自分の中ではこれ以上ないくらいに気持ちを込めて書いた論文が、上司の手により跡形もなく修正がなされ、やっと共著者に回ったと思ったら、彼らから数時間としないうちに山のようなメールが届き、大幅な修正を余儀なくされるということを多々経験します。真っ赤になったワードファイルが戻ってくると、絶望的な気持ちになることもありますが、こうしたフィードバックは論文の質を向上させてくれることは確かです。
次に、物事を深く考えるようになりました。日本で臨床研究をしていた時には、背景の理解、仮設の設定、統計処理、議論の展開とそこから得られる結論が曖昧になっていた部分がありました。こちらではそうした曖昧さが良い意味で許容されないところがあって、一つ一つの事柄に関して深く考えるようになりました。これも、研究チームにそれぞれの分野の専門家がいることや、妥協を許してくれない共著者の存在が大きいのかもしれません。
他にも、研究にまつわる金銭面の話や、ネットワーキング、臨床研究を実臨床へいかに繋げるかなどなど、日本では得難い経験をさせてもらっています。
生活面でのキーワードは「家族の結束」です。VISAの取得から始まり、引越しや、米国での生活のセットアップ、子供のプレスクール入学などなど、次々にイベントやハプニングがありましたが、文字通り「家族で力を合わせて」乗り越えました(大袈裟ですが)。日本では家族と過ごす時間も少なかったのですが、こちらでは家族単位で動くことが多く、家族とは楽しい時も辛い時もいつも一緒なので「家族の結束」は格段に強くなったように思います。子供の成長も実感できますし、子供に対する意識は大きく変わったように思います。日本でも医師の労働環境の改善が社会問題になりつつありますが、働き方に関する考え方も少し変わってきました。
また文化の多様性を考えるようになりました。当たり前ですが、日本で生まれ、日本で育ってきたため、他の文化の中に入り込むという経験がなかったため、米国という全く異なる国で生活するということは本当に多くのことを気づかせてくれます。米国には多くの負の面も存在しますが、日本にはない多くの素晴らしい面もあります。やはりこうした文化は、実際に住んでみないと分からなかったことだと思いますし、人生においてこうした経験ができていることは本当にありがたいことだと思っています。
言葉の問題で日々悔しい思いをしたり、日々の生活で不便を感じたり、立場や金銭面での不安定さを感じたりと負の面を挙げればきりはありませんが、やっぱり留学を少しでも考えている方には、実際に留学してみることをお勧めします。それだけの価値はあると思いますし、価値のあるものにできるように残りの留学期間も頑張りたいと思います。皆様、お付き合いありがとうございました。学会などで見かけた際には是非、お気軽にお声がけ下さい。