フローニンゲン大学は心不全の大規模臨床研究を主導する世界的な研究機関です!

今回は私が留学しているオランダ、フローニンゲン大学(正確にはフローニンゲン医療センター University Medical Center Groningen: UMCG)についてご紹介します。
 
フローニンゲン大学はオランダで2番目に古く、3番目に大きい大学です。設立は1614年で、今年はちょうど設立400年にあたる年となります。UMCGはいわゆる大学病院にあたる施設になりますが、オランダ北部ではかなり大きな医療施設であり、夜間などでもヘリコプターでの患者搬送を含め多くの患者を受け入れています。
 
フローニンゲン大学循環器内科は特に心不全に対する薬物治療に対して実績のある施設であり、現在も精力的に心不全に対する薬物治療の臨床研究を主導、または研究参加施設として参加しています。これまでに心不全の臨床薬物治療に関する研究としては、非代償性心不全患者における組み換えヒトB型ナトリウム利尿ペプチドの効果を検討したランダム化比較試験ASCNED-HF、選択的アルドステロン受容体拮抗薬であるエプレレノンの慢性心不全に対する上乗せ効果を証明したEMPHASIS-HF、洞結節のIfチャネル阻害薬であるイバブラジンの慢性心不全に対する上乗せ効果を証明したSHIFT等に参加しています。また、この1-2年非常に注目を浴びている女性ホルモンであるリラキシンの急性非代償性心不全患者における症状改善、予後改善効果を示したpreRELAX-AHF、RELAX-AHF、またRELAX-AHF2、アンギオテンシンⅡ受容体とネプリライシン阻害薬である新規薬剤LCZ696の拡張性心不全患者における効果を示したPARAMOUNTにも主要施設として参加しております。Adriaan Voors先生はその中でも、特に心不全における心腎連関(Cardio-renal interaction)に関してのサブ解析を担当しており、これらの大規模臨床試験のデータからも心不全における腎不全のデータを多く発表しています。
 
私がいるCardio Researchには多くの博士課程の学生が在籍しており、それぞれのテーマで研究を進めています。私が来るまで1人ドイツ人がいたのですが、ちょうど卒業してしまいました。あとは疫学を専門とする博士課程の学生でエチオピア人が1人いるだけで、あとは全員オランダ人です。今のところ心不全における心腎連関の研究は、自分とあと1人の博士課程の学生で行っています。オランダでは医学部を卒業するとまず博士課程に入りPhDをとってから循環器内科としてのトレーニングを開始する、というコースを選択する事ができ、彼女もそのコースを選択している1人です。ざっと知っているだけで心不全の博士課程で研究をしているのは3-4人ですが、それぞれが同じデータを共有しつつも違う事にフォーカスして研究を進めています。お互いにわからない事や、知らない統計知識ややり方等があれば教えたり教えてもらったりしながらやっていて、とても勉強になります。

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Voors先生は心不全に関する研究を統括しており、ほかにも疫学(epidemiology)を専門とするスタッフと予後予測モデルに関する研究や、さまざまバイオマーカーに関する研究なども行っています。Voors先生は物事をはっきりという傾向がある先生で、おかげで博士課程の学生含め上下あまり関係なく議論するのが当たり前ではありますが、これは別に彼に限ったわけではなく、オランダ人全体に言えることだと思います。また、フローニンゲンはオランダの北部に位置する都市なのですが、オランダ人は出身地が北部の方であればあるほどよりはっきりと、直接的にものを伝えるキャラクターになる、とのことでした。Voors先生は常に忙しく、電話会議などを駆使しながら欧州や米国の大学や研究機関と連携して多くのデータを扱い、また臨床研究をマネージメントされています。対外的な交渉や、データとお金を私たちが使えるように調達してくることが自分の仕事だ、といつもおっしゃっていますし、性格も穏やかなので、そういう意味ではあまりプレッシャーを受けずにできてはいます。

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次回は実際に日々何をしているのかについてお伝えする予定です。
 
Picture 1. 研究室のある場所。6つくらいの場所に分かれて、それぞれの部屋に2-3人のデスクがあります。
Picture 2. 右が上司のAdriaan A Voors先生、左が一緒にCardio-renalについて研究しているPhD course studentのJozine。


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末永 祐哉(Groningen, Netherland)