1. シチリア・カターニャの歴史、見所
シチリアの歴史は自分のような歴史好きにとってはたまらなく、興味が尽きない。実に多くの国家、民族の支配を受けており、極めて複雑である。語り出したら止まらないので詳細は割愛するが、ギリシア、カルタゴ、ローマ、イスラム、ノルマン、神聖ローマ、スペインなどの支配を経て、今日のシチリアに至っている(興味ある方は、自分の愛読書の一つである塩野七生の『ローマ人の物語』(特に「ハンニバル戦記」)をおすすめする)。地図を見てわかるように地中海最大かつど真ん中に位置しているこの恵まれた島を古代の権力者達が欲したからに違いない。このような背景があるためなのか、外国人に関しては非常に寛容で、人種差別のような思いは幸い一度も経験したことがない。また、黒目黒髪に濃い髭といったアラブ風の面影から青目金髪といったノルマン系まで見た目も幅広い。
カターニャは、紀元前8世紀頃、古代ギリシアの植民都市として建設された。Cataniaという名前も、古代ギリシア時代の呼び名Katane (カタネ)から由来している。現在の街並は、17世紀に起きたエトナ山の噴火と大地震の後に、バロック様式で再建されたものである (「ヴァル・ディ・ノートの後期バロック様式の町々」として2002年の世界遺産登録)。多くの建物の一部にはエトナ山の溶岩が使用されており、非常にユニークなものとなっている。見所は多く、絞るのは困難だが、三つ選ぶとしたら、個人的には1) 大聖堂および広場、2) 魚市場、3) エトナ山、を挙げたい。
1) 大聖堂および広場 (Picture 1上)
ヨーロッパの多くの街がそうであるように、カターニャも大聖堂 (Duomo) が街の中心部である (写真1左上)。ここはカターニャの守護聖人である聖アガタを祭っており、「聖アガタの大聖堂」とも呼ばれている。毎年二月にはキリスト教世界三大祭りとして知られている聖アガタ祭が催され、多くのキリスト教徒が熱狂的な祭りに参加する。実際、参加してみたが、ものすごい人数と迫力に圧倒された!大聖堂前のDuomo広場にはカターニャのシンボルでもある溶岩でできた象 (Picture 1右上) が佇み、人々の憩いの場となっている。
2) 魚市場”La Pescheria” (Picture 1下)
カターニャの魚市場はシチリア最大である。ここに毎週土曜日出かけるのが習慣となっている。地元の漁師たちが大声をあげ、とにかく活気が半端ない。興味深いのは、売り手が全員男なのに対して、買い手もほぼ男ということである。どうやらこれはシチリアの伝統のようだ。種類も豊富で、鮪、カジキマグロ、鯛、鯖、鰯、海老、イカ、タコ、ムール貝、アサリ、ウニなどが非常に新鮮な状態で手に入る。色々な料理をトライしたくなる最高の市場である。
3) エトナ山 (Picture 2)
ヨーロッパ最大の活火山で、標高は3,326mである。エトナ火山は、世界で最も活動的な火山の一つであり、ほぼ常に噴火している (Picture 2左上)。実際、自分が留学に来てからも街中からオレンジ色の溶岩が吹き出るのが観察できるくらいの規模の噴火は何度もあった (Picture 2右上)。冬になるとエトナ山の山頂だけ雪をかぶり、富士山と錯覚する程美しい姿に変身する。エトナ山にスキーコースがあると知ったときにはとても驚いたものである (Picture 2左下)。また、飛行機から見るエトナ山も実に美しい (Picture 2右下)。飛行機からエトナ山を見たい人は、必ず左の窓側の座席をキープするようにしよう。
2. カターニャのおすすめ料理
カターニャに限らずシチリアの食文化のレベルは非常に高い。事前リサーチなく、ふらっとお店に入ってもまず外れることはほとんどない。そんなカターニャで絶対おすすめの物がある。是非ご賞味いただきたい。
1) アランチーノ(Arancino) (Picture 3左上)
ライスコロッケである。写真の一番右に並んでいるとんがり帽子のような形が特徴的である。中に含まれている具材、味により何種類かあるが、一番ベーシックで外せないのが”Arancino al ragu”である。中身はいわゆるラグーソース、トマトソースで煮た肉、グリーンピース、そしてモッツァレラチーズが入っており、最高に旨い。
2) グラニータ(Granita) (Picture 3右上)
ジェラートのように見えるが、似て非なるものである。ジェラートと違ってミルク成分を含まない氷菓子と定義されるようだが、カターニャでは結構クリーミーで濃厚なグラニータが人気である。味は様々だが、自分の一押しはピスタチオとアーモンドである。写真のようにブリオッシュと一緒に食べることが多く、夏はもっぱらこれが朝食となる。
3) 鰯とウイキョウのパスタ(Pasta al sugo di sarde e finocchietto) (Picture 3左下)
シチリア名物である。シチリアは、昔はより貧しかったので、安価な鰯を最大限生かしたパスタである。ウイキョウは日本ではあまり使用されないが、ディルのようなハーブの一種である。栄養もあり、なおかつ旨い、健康にもいい一品である。
4) 魚の塩焼き(Pesce al sale) (Picture 3右下)
鯛などの魚を丸ごと、塩で完全に覆い、それをオーブンに入れて30-40分焼く。オーブンから取り出すと写真のように塩の鎧を着た魚となって出てくる。塩の中でずっと蒸されていたような感じである。後は塩を剥がしてオリーブオイルで頂くとほんのり塩味でエレガントな風味を醸し出す。絶品である。