私のこちらでの主な研究テーマであるAbsorb bioresorbable scaffoldに関する最近の論文をご紹介いたします。
日本ではAbsorb JapanというRCTが既に行われ、Absorb BVSを使用されたことのある先生方もいらっしゃるかと思いますが、あまりなじみのない先生方の方が多いと思います。 [1]
Bioresorbable scaffoldに我々は一体何が期待できるのか。これについてまず、簡単にご紹介いたします。
Theoretical advantages of bioresorbable scaffolds [2]
Bioresorbable scaffoldの理論上のアドバンテージは、“血管壁を一時的にサポートし、仕事が終わったら綺麗さっぱり消えてくれる“ということに起因します。
1) A reduction in long-term adverse events from permanent materials
薬剤の溶出および血管壁の保持は、血管壁が治癒するまでの一時的なものであり、スキャホールドが吸収された後は血管内に異物が残りません。これによりDESで懸念されていたVery late stent thrombosisなどの慢性期のイベントは理論上起こりません。
2) The removal, through bioresorption, of the stented vessel’s rigid caging
Bioresorbable scaffoldは金属ステントと異なり、一時的に血管壁を保時するだけであり、biodegradationの過程でRadial strengthは消失します。それにより、Vasomotionやadaptive shear stress、それに続きlate luminal enlargement、late expansive remodelingが可能となります。つまり、血管自体の生理反応が回復できます。
3) Suitability for future treatment options
Complex multivessel diseaseやDiffuse diseaseの場合、DESで治療するとfull metal jacket stentingと呼ばれるようなことになることも少なくありません。このようなケースでは、再度治療が必要になることも多く、ステントだらけの血管に対するPCIは困難を極めることも想像に難くありません。また最終的にCABGを行いたくても、Metallic stentのために血管をつなぐ場所がないといったこともあり得ます。Bioresorbable scaffoldの場合、こういった制限がないため、将来の治療の選択肢を担保することができます。
4) Allowing the use of noninvasive imaging techniques such as computed tomographic angiography or MRI for follow-up
金属ステントの場合、Blooming effectのためにCTやMRIでのフォローアップでの評価が困難となります。Bioresorbable scaffoldの場合、両サイドにMetallic marker (244 μm) がありますが、それ以外はNon-metalなのでCTやMRIでの評価に影響を及ぼしません。またMagnesiumの場合でもbioresorptionが完了すればCTやMRIで評価することができます。
5) Reservoir for the local delivery of drugs
金属ステントと違い、Bioresorbable scaffoldはそれ自体がPolymericなもので、Bioresorptionの期間も調整することができ、かつDrugを含有させることができます。例えばCoating polymerにanti-proliferative drugを、Backbone polymerに例えば抗炎症物質を含ませるなんてことも可能となります。これによりDrug溶出のタイミングを調整することができます。
6) Relief of anxiety of implanted foreign materials
これは精神的なものですが、患者さん自身が“体に異物が残っている”という感覚から解放されます。
7) Pediatric application
これはまだ実用段階ではありませんが、先天性心疾患に適用した場合、金属ステントと違いBioresorptionが終わった後には何も残らないため、子供の成長に合わせて血管自体も成長することができます。
このような理論上のメリットがある中で一番最初に挙げました、“慢性期のイベントは理論上起こらない”という我々の期待を裏切る報告が、Lorenz Raber et alからJACCに報告されました。[3]
Raber L, Brugaletta S, Yamaji K, O’Sullivan CJ, Otsuki S, Koppara T, Taniwaki M, Onuma Y, Freixa X, Eberli FR, Serruys PW, Joner M, Sabate M and Windecker S.
Very Late Scaffold Thrombosis: Intracoronary Imaging and Histopathological and Spectroscopic Findings. Journal of the American College of Cardiology. 2015;66:1901-14.
Very late scaffold thrombosis (VLScT) の4例のケースシリーズで、19ヶ月x 2症例, 21ヶ月x 1症例, 44ヶ月x 1症例が報告されました。全ての症例で抗血小板剤は内服されていました。OCT dataとHistologyが検討されており、VLScTの原因としてはuncovered struts, intraluminal scaffold dismantling, under-expansionが考察されています。Intraluminal scaffold dismantling はBioresorbable scaffold特有のものです。これはBiodegradationの過程でScaffold integrityを失い、同時に血管の生理的反応に適応していくための、いわばプログラムされた一つの過程で起こり得ることですが、それが慢性期のイベントの原因になることは想像に難くありません。ただし、SaffoldのuncoverageやIntraluminal scaffold dismantlingについては、吸引カテーテルやOCTが通過する際に引き起こした可能性は否定できませんので、この結果の解釈には十分注意する必要もあります。
また、注目すべきは44ヶ月の症例で、PLLAのmaterialが残存していた可能性が高いということです。Animalのデータでは、PLLAは通常3年で完全にBiodegradationされていました。この過程は完全にChemicalなもので、細胞や酵素の反応により起こるものではないため、一般的にはAnimalだろうがHumanだろうが同じであると考えられます。にもかかわらず44ヶ月でPLLAが残存したことは、Humanにおける、biodegradation processの多様性を示唆します。
これらのケースシリーズはもちろん非常にまれであり、過度に心配するものではないということはProf. Gregg StoneもEditorial commentの中で述べていますが、こういったことが起こり得るということは頭に置いておく必要があります。[4]
DESと比較してどうかということは、今後のABSORB IVなどの十分にPowerを持った大規模試験の結果に期待したいところです。
Reference:
[1] Kimura T, Kozuma K, Tanabe K, Nakamura S, Yamane M, Muramatsu T, Saito S, Yajima J, Hagiwara N, Mitsudo K, Popma JJ, Serruys PW, Onuma Y, Ying S, Cao S, Staehr P, Cheong WF, Kusano H and Stone GW. A randomized trial evaluating everolimus-eluting Absorb bioresorbable scaffolds vs. everolimus-eluting metallic stents in patients with coronary artery disease: ABSORB Japan. European heart journal. 2015.
[2] Sotomi Y, Suwannasom P, Tenekecioglu E, Tateishi H, Abdelghani M, Serruys PW and Onuma Y. Differential aspects between cobalt-chromium everolimus drug-eluting stent and Absorb everolimus bioresorbable vascular scaffold: from bench to clinical use. Expert review of cardiovascular therapy. 2015;13:1127-45.
[3] Raber L, Brugaletta S, Yamaji K, O’Sullivan CJ, Otsuki S, Koppara T, Taniwaki M, Onuma Y, Freixa X, Eberli FR, Serruys PW, Joner M, Sabate M and Windecker S. Very Late Scaffold Thrombosis: Intracoronary Imaging and Histopathological and Spectroscopic Findings. Journal of the American College of Cardiology. 2015;66:1901-14.
[4] Stone GW and Granada JF. Very Late Thrombosis After Bioresorbable Scaffolds: Cause for Concern? Journal of the American College of Cardiology. 2015;66:1915-7.