以前のレポートにも書いたように幸いとても充実した二年間であった。だが、ここでの二年間はあくまでTamburino教授が築き上げたチームに加えていただき、手技や臨床研究を通じて学ばせていただいただけであって自分で何かを作り上げたわけではない。患者を自分で集めたわけでもなければ、手技の全責任を自分で負っていたわけでもない。この留学を経て、SHD interventionという、アツく、興味深く、奥深い領域のスタートラインにようやく立とうとしている、そんな状況である。それゆえ、日本に帰国してからが自分にとっての新たなスタート、挑戦となり、今からとても楽しみである。
いい仕事をするにはそれなりの時間を要するものである。名勝野村克也監督もヤクルトスワローズをリーグ優勝に導くのに三年を要しており、後に、「一年目には種をまき、二年目には水をやり、三年目には花を咲かせましょう」と述べている。日本に戻ってからお世話になる東海大学ではまだTAVIは開始できていないが、心房中隔欠損症や卵円孔開存に対するカテーテル閉鎖術、バルーン肺動脈形成術、経皮的僧帽弁交連切開術、バルーン大動脈弁形成術などは順調に進んでおり、幸い中澤学先生が素晴らしいハートチームをつくってくださっているので、自分の学んだ事を余すところなくチームのみんなに伝えて、今後のTAVIやMitraClip、左心耳閉鎖術などに向けてしっかりと準備していきたいと考えている。
留学中に主に学んできたTAVIやMitraClipを実際に開始するまでにやれることも山ほどある。自分が積極的に携わっていく自施設のローカルハートチームのレベルアップは言うまでもなく重要であるが、同時に国内でSHD interventionを積極的に行っている施設との連携、手技開始後のレジストリー登録や共同研究の準備である。そして、留学中に築いたネットワークを生かした国際多施設共同研究に参加するための土台作りも必要になる。 まずは、焦らず土台を固め、5年後には患者さんに信頼されるSHD intervention centerになるよう一例一例大切に、丁寧にチームのみんなで力を合わせて質の高い治療を提供していきたいと考えている。そして、10年後には国内国外の多くの多施設共同研究に貢献できるような施設に成長していければ何よりも嬉しい。